公開日: 2025.07.07
【2025】特定技能で「派遣」可能な職種は農業・漁業のみ|要件・業務内容を解説
特定技能で「派遣」可能な職種は農業・漁業のみ|要件・業務内容を解説

「特定技能の外国人材は派遣で受け入れられる?」「派遣が認められている職種はどれ?」このような疑問を抱える企業担当者の方は少なくありません。

外国人材の採用に関心を持つ企業は増加傾向にありますが、人件費や制度の複雑さから一歩を踏み出せずにいるケースも多く見受けられます。実際、特定技能制度では、派遣が許可されている職種はごく限られており、多くの分野では正社員との同待遇を前提とした「直接雇用」が原則です。

そこで今回は、特定技能制度において派遣が可能な職種とその制度的背景、制度違反時のリスク、そして代替となる対応策を丁寧に解説します。制度を正しく理解し、安心かつ合法的に外国人材を活用したいと考える企業の皆さまにとって、実務上の重要な指針となる内容をお届けします。

在留資格「特定技能」とは

特定技能は、人手不足が深刻な産業分野において、即戦力となる外国人材を受け入れるために創設された在留資格です。技能実習制度よりも実務的な性質を持ち、一定の日本語能力と技能水準を備えた人材が、雇用現場で即戦力としての活躍を期待されています。

この在留資格は「特定産業分野」に限定されており、制度上は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2区分に分かれます。特定技能1号は、一定水準の技能と日本語能力を有する外国人を対象に、最長5年間の就労が認められる制度であり、特定技能2号は、1号の実務経験を経た熟練人材を対象とし、より長期的な在留と就労が可能です。

また、特定技能制度では、単なる労働力の補填にとどまらず、企業と外国人材の安定的な雇用・生活を支える支援体制の整備が求められています。長期的な人材育成の視点が重視されており、制度活用の際にはその趣旨を十分に理解しておくことが不可欠です。

特定技能で認められる派遣制度の基本

特定技能制度では、基本的に「直接雇用」が原則ですが、業種によっては例外的に「派遣」が認められるケースもあります。これは、地域性や季節性といった現場の事情に対応し、より柔軟な人材確保を可能にするための制度設計です。ここでは、特定技能で認められる派遣制度の概要を解説します。

特定技能外国人の雇用形態は直接雇用が原則

特定技能制度においては、外国人材と雇用主との直接契約が原則とされています。これは労働条件の透明性を確保し、不当な中間搾取を防ぐことを目的としています。外国人労働者の権利を守り、企業が安定的な雇用と育成を行うには、直接雇用が最も適した形態と位置づけられています。

ただし、すべての産業において常に直接雇用が可能とは限らず、特定の条件下においては、制度上「派遣」が認められる仕組みが整備されています。

派遣が認められているのは「農業」「漁業」分野に限定される

2025年6月時点で派遣が制度的に許可されているのは、「農業」と「漁業」の2分野に限られています。これらの業種では、人手不足が季節的に変動しやすく、臨時的な労働力の確保が求められるためです。

政府はこのような事情を踏まえ、特定の条件を満たす場合に限って派遣という雇用形態を例外的に認めることで、制度の柔軟性と実効性を両立させています。

この特例により、地域や季節に応じた人材の最適な配置が可能となり、農業・漁業の安定的かつ持続的な運営を支える仕組みが構築されています。

特定技能で派遣可能な職種・業務内容

特定技能制度で派遣が認められているのは、「農業」と「漁業」の2分野に限られており、さらにその中でも具体的な業務内容が制度上明確に定められています。ここでは、それぞれの分野で派遣可能な業務の代表例と、制度違反を防ぐために押さえておくべき実務上の留意点について解説します。

農業分野で派遣できる具体的業務

農業における派遣業務は、主に季節的な繁忙期に対応する作業に限定されています。たとえば、次のような業務が該当します。

  • 農作物の収穫や選別作業
  • 農産物の包装や出荷準備
  • ビニールハウス内での栽培作業
  • 圃場での除草や施肥作業

これらの作業は、短期間に大量の人手が求められるため、複数の農家に人材を柔軟に派遣できる制度の意義は非常に大きいといえます。

ただし、労働時間や作業内容、環境に関する契約内容を詳細に定めたうえで、記録を適切に管理することが必須です。万が一これらの管理が不十分な場合、制度違反と判断され、是正勧告や受け入れ停止などの行政指導を受けるおそれがあるため注意が必要です。

漁業分野で派遣できる具体的業務

漁業における派遣もまた、現場での補助的かつ季節的な作業に限られます。代表的な対象業務には次のようなものがあります。

  • 養殖業における給餌・掃除・網の補修
  • 沿岸漁業における水揚げ作業
  • 加工場での水産物の仕分けや梱包作業
  • 出荷前の出荷準備や運搬業務

漁業は天候や海況によって作業量が大きく変動するため、臨機応変な人材配置が重要です。派遣制度を活用することで、現場ニーズに即応できる体制を構築することが可能になります。

ただし、「出荷準備や運搬業務」のうち、施設外での輸送や搬送とみなされる作業は制度の対象外となる可能性があり、実態に応じて個別に判断されます。

加えて、漁業においても安全と衛生の確保は欠かせません。派遣先では、事前研修の実施や防護具の支給を含む労働環境の整備が求められ、これらを怠った場合にも制度上の問題となるため、受け入れ側には万全の準備が必要です。

特定技能の派遣を行う企業に求められる法的要件:派遣元企業

特定技能外国人を派遣するには、派遣元企業が厳格な法的要件を満たしていることが前提です。制度に則った適正な運用を行うためには、派遣元企業の性質・業務内容・管理体制のすべてが一定の基準をクリアしている必要があります。

まず、派遣元企業は、次のいずれかに該当することが条件です。

  1. 当該特定産業分野(農業・漁業)に係る業務又はこれに関連する業務を行っている個人又は団体であること。
  2. 地方公共団体又は前記1に掲げる個人又は団体が資本金の過半数を出資していること。
  3. 地方公共団体の職員又は前記1に掲げる個人又は団体若しくはその役員若しくは職員が役員であることその他地方公共団体又は前記1に掲げる個人又は団体が業務執行に実質的に関与していると認められること。
  4. 外国人が派遣先において従事する業務の属する分野が農業である場合にあっては、国家戦略特別区域法第16条の5第1項に規定する特定機関であること。

さらに、外国人材を適正に派遣・管理する体制が整っていることも必須要件とされており、制度に基づく報告義務の履行や、労働関連法令の遵守が求められます。

具体的な派遣元企業の例としては、JA(農業協同組合)、漁業協同組合、自治体が出資する第三セクター法人、地方公社、国家戦略特区内の農業支援会社などが挙げられます。これらの組織は、現場に即した支援体制を構築しており、制度に準拠した適切な派遣が求められています。

加えて、適切な管理体制の整備も不可欠です。労働条件の明示、就業記録や契約書の整備、支援計画の策定・実行、そして定期的なモニタリングの実施など、多岐にわたる対応が求められます。これらを怠った場合には、派遣許可の取り消しといった行政処分の対象となる可能性もあります。

また、派遣元企業には、就労面だけでなく生活面での支援責任も課されています。通訳対応、生活相談、緊急時の連絡体制など、外国人材が安心して働ける環境を整備することが、円滑な受け入れにつながる重要な要素です。

特定技能の派遣を行う企業に求められる法的要件:派遣先企業

特定技能外国人の派遣を受け入れる農家や漁業者も、派遣元企業と同様に厳格な法的要件を満たす必要があります。申請時には制度適合性が審査され、基準を満たさない場合は派遣の受け入れ自体が認められません。

具体的には、次の要件をすべて満たしていることが求められます。

  1. 労働基準法や労災保険、健康保険、雇用保険など、労働・社会保険関連法令を順守していること
  2. 特定技能外国人が従事する予定の業務について、過去1年以内に同種の業務に従事していた労働者を解雇・離職させていないこと(いわゆる「代替雇用の禁止」)
  3. 同じく過去1年以内に、派遣先の責任で行方不明となった外国人がいないこと
  4. 刑罰法令違反による罰則を受けていないこと(重大な欠格事由がないこと)

また、派遣先企業には、外国人材が安心して働けるよう、安全かつ衛生的な労働環境を整える責任があります。実務上は、作業内容を正しく伝えるために通訳の配置や多言語対応の作業マニュアルを準備することが重要です。

さらに、ハラスメント防止や労働災害のリスクを軽減するため、定期的な安全衛生研修の実施も求められます。加えて、外国人材が生活上の不安や職場での悩みを相談できるよう、社内または外部機関に相談窓口を設置することも必要です。

これらの体制が不十分な場合、派遣元との連携による受け入れが認められない可能性があるため、制度活用にあたっては十分な準備と制度理解が欠かせません。

派遣制度の実務運用で注意すべきポイント

特定技能制度において派遣を活用するには、制度上の条件を満たすだけでなく、日々の実務運用においても法令遵守と管理体制の確立が不可欠です。適正な雇用関係を維持し、制度違反を未然に防ぐためには、関係する各種ルールを正しく理解し、確実に対応することが求められます。ここでは、実務上特に重要な5つの視点から注意点を解説します。

  • 労働者派遣法との重複ルールを確認する
  • 派遣期間の上限(3年)と延長の条件に注意する
  • 派遣先の地域は「通勤可能圏内」に限定される
  • 法定帳簿は未整備とならないよう管理する
  • 不法就労助長とみなされないよう慎重に対応する

労働者派遣法との重複ルールを確認する

特定技能における「派遣」は出入国在留管理庁が所管する制度ですが、同時に労働者派遣法(厚生労働省)との関係にも注意が必要です。派遣元企業が労働者派遣事業や有料職業紹介の許可を持たない場合、意図せず無許可派遣と判断されるリスクがあります。

特に「常用代替の防止」や「二重派遣の禁止」など、派遣法の原則との整合を常に確認しておく必要があります。制度対応に不安がある場合は、行政書士や社労士、外国人雇用に詳しい弁護士、労働局などの専門家への相談が効果的です。

派遣期間の上限(3年)と延長の条件に注意する

特定技能での派遣も、原則として同一の派遣先で3年を超えて継続勤務することは認められていません。これは、派遣が一時的・補助的な就労であることを前提とした制度設計によるものです。

ただし、特定技能1号の在留期限(最長5年)内であれば、派遣先の変更や契約更新によって継続就労が可能となる場合もあります。その際も、契約内容の整備や各種届出の提出が必要です。

派遣先の地域は「通勤可能圏内」に限定される

原則として、派遣先は外国人材が日常的に通勤可能な圏内に限られています。制度上、「日帰りでの通勤が可能な距離」が基準とされており、宿泊を伴うような遠隔地への派遣は認められていません。

そのため、派遣前には交通手段や所要時間を必ず確認し、無理のない勤務環境が確保されているかを見極めることが重要です。また、通勤費の負担範囲や支給ルールも契約書に明記しておくと、後のトラブル防止につながります。

法定帳簿は未整備とならないよう管理する

派遣元・派遣先ともに、労働条件通知書や契約書、勤務日報、支援記録といった法定帳簿を整備・保管する義務があります。これらが不備・未整備であると、監査時に行政指導や是正命令を受ける可能性があります。

さらに、在留資格に関する書類(在留カードの写し、支援計画書、実施記録など)も法令に基づく保存期間が定められています。帳簿管理の責任の所在を契約時に明確にし、定期的な内部監査を行うことがリスク管理の基本です。

不法就労助長とみなされないよう慎重に対応する

制度に対する理解不足や手続きの不備が、不法就労助長と見なされるリスクを招く場合があります。たとえ外形上は制度に沿っていても、実態として違法な労働が行われていれば、不法就労と判断される可能性は十分にあります。

企業に刑事責任が及ぶこともあるため、次の項目について常にチェックを行う必要があります。

  • 派遣元・派遣先が制度要件を満たしているか
  • 従事する業務が在留資格に適合しているか
  • 在留期限を超過していないか
  • 支援体制や労務管理が適正に行われているか

少しでも不安がある場合は、登録支援機関や各種専門家の支援を活用し、法令に沿った体制構築を行うことが、最も確実なリスクヘッジとなります。

特定技能外国人の「派遣社員」と「正社員」雇用の違いと選択のポイント

特定技能外国人の雇用形態を「派遣社員」とするか「正社員」とするかは、企業の人材戦略や業務の特性に応じて判断すべき重要な選択です。それぞれの形態には異なる利点と留意点があるため、制度の理解を踏まえたうえで、自社に最適な形を見極めることが求められます。

ここでは、特定技能外国人の「派遣社員」と「正社員」雇用の違いと、選択する際のポイントについて解説します。

派遣社員が向いているケース

短期間で変動する人材ニーズがある業種や、複数の現場に人材を柔軟に配置したい場合には、派遣形態が有効です。特に農業・漁業のように季節的な繁忙期が明確な分野では、次のようなケースで派遣が適しています。

  • 収穫期や出荷時期など、一時的に人手を集中させたい場合
  • 複数の農家で人材を循環的に運用したい場合
  • 地域ごとに異なる人材需要にフレキシブルに対応したい場合

派遣形態であれば、就労先の変更や労働力の再配置がしやすく、臨機応変な運用が可能になります。ただし、派遣の対象業種や地域、就労期間には制度上の厳格な制限があるため、正確な理解と遵守が不可欠です。

正社員雇用が向いているケース

一方で、外国人材を長期的な戦力として安定的に育成したい場合には、直接雇用による正社員登用が適しています。特に次のような状況では、正社員雇用が望ましい選択肢となります。

  • 慢性的な人手不足により、通年での雇用が必要な場合
  • 技能や経験を積ませ、現場の中核を担う人材として育成したい場合
  • 将来的に「特定技能2号」や「介護」などの在留資格への移行を視野に入れている場合

直接雇用では、給与支払いや社会保険の対応など、企業側にかかる責任は大きくなりますが、その分、外国人材との信頼関係を築きやすく、定着率や生産性の向上といった中長期的なメリットが期待できます。

外国人材の支援サポートは「外国人材採用ラボ」をご活用ください

特定技能制度を活用し外国人材を受け入れる際、多くの企業が感じるのが「制度の複雑さ」や「実務対応の煩雑さ」です。

株式会社クレイプラスが運営する「外国人材採用ラボ」では、そういった企業の課題に寄り添い、採用から定着までを一貫してサポートする専門サービスです。これまでに多数の企業の受け入れを支援してきた実績をもとに、実務に即した最適なサポートを提供します。

最後に、外国人材採用ラボの概要と提供するサービスを紹介します。

外国人材採用ラボとは

外国人材採用ラボは、外国人材雇用に関する実務支援に特化したサービスです。

複雑な在留資格の手続きや、送り出し機関・登録支援機関との調整、必要書類の整備など、採用の初期段階から企業をトータルで支援します。法務省や出入国在留管理庁の制度変更にも迅速に対応し、常に最新情報を提供する体制が整っています。

制度理解から受け入れ準備まで一貫して支援する

外国人材採用ラボでは、特定技能制度に関する基本情報の提供から、受入れ機関(受入れ企業)の状況に合わせたアドバイス、支援計画書の作成支援、在留資格申請手続きのサポートまで、ワンストップで対応しています。

採用に向けた準備段階での「制度理解」や「雇用条件の整備」も支援範囲に含まれているため、初めて外国人材を受け入れる企業でも安心して導入を進めることができます。

各国の送り出し機関・支援機関と連携した実務対応が可能

外国人材採用ラボでは、ベトナムやフィリピン、インドネシアといった主要な送り出し国とのネットワークを活かし、現地での人材選定から面接の設定、渡航準備の調整、そして来日後の生活支援までを外国人材採用ラボが包括的に実施しています。

こうした対応により、企業が直面しやすい国際間の調整業務や手続き上の不安を大幅に軽減できます。また、各国の制度に即した人材紹介が可能であるため、企業にとっても制度適合性の高い人材を安心して迎え入れることができます。

初めての受け入れでも安心できるサポート体制を整える

外国人材採用ラボでは、採用後の支援体制にも力を入れており、来日後の生活オリエンテーションから、勤務状況・生活状況の定期的なヒアリング、トラブル時の対応に至るまで、受入れ機関と外国人材双方に寄り添ったフォローアップを提供しています。

たとえば、交通ルールやゴミ出しといった日常生活に必要な情報提供をはじめ、企業との関係構築を円滑に進めるための相談窓口も設置されています。このように、制度や言語への不安がある企業であっても、こうした支援体制を活用することで、法令順守と職場定着の両立を実現することが可能です。

まとめ

特定技能制度における派遣の適用は極めて限定的で、現行では農業と漁業の分野にのみ認められています。そのため、多くの業種では外国人材の受け入れに際して、原則として直接雇用が求められます。しかし、繁忙期や地域特性に応じて、制度の範囲内で派遣を活用することは、現場の柔軟な人材確保という観点から有効な手段になり得ます。

ただし、派遣制度を適正に活用するためには、派遣元・派遣先の双方における法的条件の遵守をはじめ、労働者派遣法との整合性、就労管理の徹底、そして支援体制の整備など、多面的な実務対応が欠かせません。これらを怠ると、制度違反による受け入れ停止や行政処分などの重大なリスクに直結するため、導入には慎重かつ的確な準備が求められます。

外国人材採用ラボでは、こうした制度の運用に関する複雑な手続きや管理体制の構築に対して、専門的な知見と現場に即したノウハウを活かし、採用から定着までを一貫してサポートしています。初めて特定技能制度を導入する企業にとっても、法令順守と実務運用を両立できる安心の支援体制を提供しています。

外国人材の雇用は、単なる労働力不足の解消にとどまらず、多様性を取り入れた組織づくりや、将来的な国際競争力の強化にもつながる重要な経営戦略の一環です。特定技能制度の活用を前向きに検討している企業の皆さまは、外国人材採用ラボのサービスを活用し、自社に最適な受け入れ体制の構築にお役立てください。少しでもご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。