
国内の慢性的な人手不足の解消に向け、特定技能外国人の受入れを開始する企業が増えています。特定技能外国人には、同等の業務に従事する日本人社員と同等以上の待遇が必要です。一方、「特定技能外国人は安く雇用できる」と誤解している方も多いです。
そこで今回は、特定技能外国人の待遇について比較参照すべき日本人社員の要件や、具体的な待遇の内容、待遇の設定にあたっての注意点などについて解説します。新たに特定技能外国人の受入れを検討している企業の経営者や人事・労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
特定技能外国人の待遇は日本人と同等以上にしなければならない
特定技能外国人に関するよくある誤解の一つに「外国人だから日本人よりも安い給料で雇用することができる」といった認識がありますが、特定技能外国人の待遇は日本人社員と同等以上にしなければなりません。
特定技能制度においては、受入れ機関が特定技能外国人を受け入れる基準の一つとして日本人と同等以上の待遇にする要件が定められています。要件を満たさない場合は特定技能外国人の受入れが認められないため、注意が必要です。
特定技能外国人とは
特定技能外国人とは、特定技能の在留資格を持ち、日本の企業で働く外国人材のことです。
在留資格「特定技能」は、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野(以降「特定産業分野」)において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れていくために創設されています。
外国人材が特定技能の在留資格を取得するためには、特定産業分野別に定められた日本語試験や技能試験への合格が必要となります。特定技能1号の場合は在留資格の更新を行いながら最長5年まで、特定技能2号の場合は在留資格の更新を行いながら上限なく日本への在留が可能です。
特定技能外国人を採用することで、即戦力として活躍できる人材を長期にわたって安定的に確保することができます。したがって、現在さまざまな企業で特定技能外国人の受入れが進められています。
参照元:特定技能制度(出入国在留管理庁)
特定技能外国人の待遇を日本人と同等以上にする理由
特定技能外国人の待遇は、なぜ日本人と同等以上にしなければならないのでしょうか?その背景には、同一労働同一賃金の原則があります。
同一労働同一賃金とは、雇用形態にかかわらず、同じ仕事に従事する労働者に対しては同じ賃金を支払うというルールです。雇用形態を理由とした不合理な格差については、従来もパートタイム労働法や労働契約法などで禁止されていました。
2021年度に「パートタイム・有期雇用労働法」に統合されて以降、規定やガイドラインが整備されるとともに、労働者への待遇に関する企業側の説明義務が強化されました。
同一労働同一賃金の考え方は、国籍を問わずすべての労働者に適用されます。前述のとおり、特定技能外国人は、一定の日本語水準・技能水準を有しており、日本人社員と同等の業務に従事します。そのため、待遇についても日本人社員と同様に報いる必要があるのです。
また、特定技能制度において待遇に関する要件が厳格になっている一因には、技能実習制度において散見された失踪問題を解消したいという狙いもあります。技能実習制度が施行されて以降、最低賃金以下の賃金で技能実習生を雇用する悪質な受入れ機関が多く発生しました。報酬額に対する不満から失踪する技能実習生が増え、社会問題となりました。
特定技能外国人の待遇を日本人と同等以上にすることには、特定産業分野全体の賃金水準を維持し、不当な競争を抑止する効果もあります。そのため、特定技能外国人の待遇の適正化は、外国人材本人だけでなく、受入れ機関や業界全体にとっても重要であるといえます。
特定技能外国人の比較対象となる日本人とは
特定技能外国人の待遇を設定する際には、どのような日本人社員と比較する必要があるのでしょうか?
特定技能外国人の比較対象となるのは、受入れ機関に雇用され、特定技能外国人と同等の業務に従事する日本人社員です。比較対象となる実務年数や経験については、特定技能1号・特定技能2号の在留資格の種類に応じて異なります。具体的には次のとおりです。
在留資格 | 概要 |
---|---|
特定技能1号 | 特定技能1号は、技能実習2号修了者であればおおむね3年間、技能実習3号修了者であればおおむね5年間にわたり、日本に在留し技能実習を修了しています。このため、従事しようとする業務について、おおむね3〜5年程度の実務経験者として取り扱うことが必要となり、基本的には入社後3〜5年程度の経験を積んだ日本人社員が待遇の比較対象となります。 |
特定技能2号 | 特定技能2号に求める要件は特定産業分野によって異なりますが、多くの分野では2年以上にわたって管理・指導に携わった経験が必要です。そのため、基本的には監督・管理職を2年以上経験している日本人社員が待遇の比較対象となります。 |
特定産業分野によって、比較対象の日本人社員に関してより詳細な定義が設けられている場合があります。詳しくは分野別の特定技能運用要領を参照してください。
日本人と同等以上にすべき特定技能外国人の待遇
特定技能外国人について、日本人と同等以上にすべき待遇とは、具体的に次の3種類です。
- 報酬の額・決定方法
- 教育研修・福利厚生
- 所定労働時間
ここでは、日本人と同等以上にしなければならない待遇の具体的な内容について詳しく紹介します。
参照元:
報酬の額・決定方法
特定技能外国人について日本人社員と同等以上にすべき待遇の一つとして、報酬の額とその決定方法が挙げられます。具体的には、特定技能外国人と同等の技能を有する日本人社員が従事する場合と同等額以上の報酬を安定的に支払い、技能習熟に応じて昇給を行うとともに、その旨を特定技能雇用契約に明記していることが求められます。
また、特定技能外国人の受入れの際には、出入国在留管理庁が報酬の額や決定方法の妥当性を確認するために、受入れ機関は雇用契約書や特定技能外国人の報酬に関する説明書を提出しなければなりません。
特定技能制度では、基本給だけでなく、毎月固定的に支給される所定内手当についても審査の対象となります。ただし、通勤手当・扶養手当・住宅手当など、実費弁償の性格を持つ手当のうち課税対象ではないものについてはこの限りではありません。
さらに、個々の従業員の合理的かつ客観的な技能の習熟に報いるために、追加手当などの制度によって報酬の差を設けることについても問題ありません。たとえば、次のような手当が挙げられます。
- 職長手当
- 従事する作業に関する技能検定などの取得による技能手当
- 社内制度による検定などの合格による技能手当
教育研修・福利厚生
教育研修や福利厚生の仕組みなどについても、日本人社員と同等以上にしなければなりません。特定技能運用要領では、外国人であることを理由として、次のような待遇について差別的な取扱いをしてはならないと定められています。
- 教育訓練の実施
- 福利厚生施設の利用(社員住宅、診療施設、保養所、体育館など)
- その他
なお、特定技能1号の外国人材に対しては、受入れ機関もしくは登録支援機関を介して義務的支援の提供が必要であり、日本人社員以上の福利厚生を用意しなければならない場合がある点に注意が必要です。たとえば、受入れ機関が賃貸住宅を借りて外国人材に提供する場合には、敷金・礼金・保証金・仲介手数料・更新手数料・途中解約金等を外国人材に負担させることができません。
詳しい義務的支援の内容については1号特定技能外国人支援に関する運用要領を参照してください。
参照元:1号特定技能外国人支援に関する運用要領(出入国在留管理庁)
所定労働時間
特定技能外国人の所定労働時間についても、受入れ機関に雇用される通常の日本人社員と同等である必要があります。このとき、所定労働時間とは、雇用契約や就業規則で定められた労働時間を指します。
なお、受入れ機関が就業規則を作成している場合、就業規則で定められたものに準じます。また、通常の日本人社員とは、フルタイム労働者を指します。特定技能制度においては、原則として労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であって、かつ週労働時間が30時間以上であることがフルタイムの定義となっています。
特定技能外国人の受入れの際には、出入国在留管理庁が所定労働時間の条件を確認できるよう、雇用条件書や特定技能外国人が十分に理解できる言語を併記した年間のカレンダーの写しなどを提出しなければなりません。1年単位の変形労働時間を採用している場合には、労働基準監督署へ届け出た変形労働時間制に関する協定書の写しも提出が必要です。
同等の業務に従事する日本人がいない場合の報酬の設定方法
特定技能外国人と同等の業務に従事する日本人社員がいない場合の報酬決定の方法は、次の3パターンに分岐します。
- 賃金規程がある場合
- 賃金規程がなく、特定技能外国人と近い業務に従事する日本人社員がいる場合
- 賃金規程がなく、特定技能外国人と近い業務に従事する日本人社員もいない場合
ここでは、特定技能外国人と同等の業務に従事する日本人社員がいない場合の報酬の設定方法について解説します。
参照元:
賃金規程がある場合
賃金規程がある場合は、賃金規程で定めている内容に基づいて決定します。賃金規程に照らした受入れ機関の報酬体系の観点から、特定技能外国人の報酬額が適正であることを説明することが可能です。
【賃金規程がない場合】特定技能外国人と近い業務に従事する日本人社員がいる場合
賃金規程がない場合には、特定技能外国人と近い業務に従事する日本人社員を比較対象として報酬を設定します。
具体的には、任される業務内容や職務に対する責任の程度を比較し、合理的な報酬の差はどの程度なのかを検討の上、妥当と考えられる報酬額を設定します。
【賃金規程がない場合】特定技能外国人と近い業務に従事する日本人社員がいない場合
賃金規程もなく、特定技能外国人と近い業務に従事する日本人社員もいない場合には、報酬の設定方法については任意となります。特定技能外国人の報酬に関する説明書には、特定技能外国人の報酬の額を決定した方法や経緯に関する説明を記載しなければなりません。
各種書類の提出後、出入国在留管理庁による審査の中で、記載されている報酬額と近隣の同業他社における同等業務に従事する同等程度の経験を有する特定技能外国人の報酬額が比較され、妥当性が確認されることになります。
特定技能外国人の待遇を日本人と同等以上にする際のポイント・注意点
特定技能外国人の待遇を設定する際には、気をつけたいポイントがあります。ここでは、特定技能外国人の待遇を日本人と同等以上にする際のポイント・注意点について解説します。
- 日本人についても不当に低い賃金で働かせてはならない
- 少なくとも技能実習2号の給与水準を上回るようにする
日本人についても不当に低い賃金で働かせてはならない
特定技能外国人と同様に、日本人社員についても不当に低い賃金で働かせてはならない点に注意が必要です。
前述のとおり、特定技能外国人の報酬の額は、同程度の業務に従事する日本人社員と比較の上決定されます。中には、特定技能外国人に支払う報酬の額を低くするために、同等の業務に従事する日本人社員の賃金を下げようと考える受入れ機関もあります。
労働契約法上、企業が一方的に社員の給与を減額することは違法であるうえ、コンプライアンスの観点でも問題があります。特定技能外国人に対しても、日本人社員に対しても、適正な報酬額を支給する必要があります。
少なくとも技能実習2号の給与水準を上回るようにする
特定技能外国人の報酬の額については、少なくとも技能実習2号の給与水準を上回る必要がある点にも注意が必要です。
受入れ機関によっては、特定技能外国人と技能実習生を両方雇用しているケースもあると考えられます。特定技能1号の外国人材は、技能実習2号を修了した外国人と同等程度の技能水準を有しています。このことから、基本的には入社時時点で技能実習2号の給与水準を上回ることが求められます。
特定技能外国人の採用は「外国人材採用ラボ」をご活用ください
特定技能外国人を受け入れる際には、自社で同等の業務に従事する日本人社員と同等以上の待遇を設定する必要があります。一方、はじめて特定技能外国人を採用する企業からは「具体的な報酬設計が難しい」「申請書類の記載でつまずいている」など、お悩みやご不安の声も多く寄せられています。
当社株式会社クレイプラスが運営する「外国人材採用ラボ」は、特定技能制度を通じた外国人材の採用支援に特化したサービスとして、多くの企業様とともに人材確保の課題に取り組んできました。はじめての特定技能外国人の採用に対しても、徹底的にサポートすることが可能です。
最後に、特定技能外国人の受入れにお悩みの企業の経営者や人事担当者の方向けに、株式会社クレイプラスの「外国人材採用ラボ」を紹介します。
外国人材採用ラボとは
「外国人材採用ラボ」とは、株式会社クレイプラスが運営する外国人材紹介サービスです。ここでは、株式会社クレイプラスや外国人材採用ラボの3つの特徴を紹介します。
- 人材会社として人手不足解消にむきあい続けた歴史を持つ
- マーケティングの力により、幅広く人材を探し出す
- 一人ひとりと丁寧に面談を実施している
人材会社として人手不足解消にむきあい続けた歴史を持つ
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マーケティングの力により、幅広く人材を探し出す
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まとめ
特定技能外国人を雇用するにあたって、外国人であることを理由に不利益な取扱いをしてはなりません。出入国在留管理庁による審査の中で「特定技能外国人に対して適切な支援が行われていない」と判断された場合、受け入れが認められないケースもあります。
「外国人材採用ラボ」なら、人材紹介から在留資格の届出・手続き、義務的支援の実行まで、ワンストップでサポートが可能です。特定技能外国人の受入れに関するお悩みや不安については、クレイプラスの「外国人材採用ラボ」までお気軽にご相談ください。