
特定技能外国人の定着率の低さにお悩みの企業も多い中、令和6年(2024年)12月末には特定技能外国人数は28万人を突破しました。
今回は、特定技能人材の離職に関する最新データから、離職に至る5つの主な理由について解説します。また、明日からでも実践できる離職防止対策や、企業の負担を軽減する「登録支援機関」の活用についても紹介します。特定技能人材の採用を成功させるための参考になれば幸いです。
特定技能人材の離職率の最新動向
特定技能人材の自己都合による退職者数は、制度施行から令和4年(2022年)11月までで累計1万9,899人に上っています。数字だけを見ると外国人材の定着は難しいような印象を受けますが、実情は大きく異なります。ここでは、離職率や離職後の動向など、最新データを基に実態を詳しく解説します。
各分野別の自己都合による離職率
特定技能外国人の自己都合による離職率は、分野によって大きな差が見られます。

画像引用元:特定技能制度の現状について(出入国在留管理庁)
出入国在留管理庁がまとめた資料によると、令和4年(2022年)11月末時点で離職率が最も高いのは「宿泊業」で32.8%に上りました。次いで「農業」が20.1%、「外食業」が19.6%と続いており、これらの業種では比較的離職が起こりやすい傾向にあるようです。
一方で、「介護」は10.6%、「自動車整備」は8.9%と、全分野の平均(16.1%)を下回っており、比較的安定した就労状況がうかがえます。
このように、分野ごとの労働環境や業務内容の違いが、離職率に影響を与えている可能性があります。
自己都合による退職後の在留状況
自己都合による退職後の在留状況を見てみると、帰国している外国人材は約3割に留まり、残りの約7割は日本国内に在留しています。自己都合による退職後の状況は次のとおりです。

画像引用元:特定技能制度の現状について(出入国在留管理庁)
「特定技能での転職」が30.3%、「別の在留資格へ変更」が15.1%となっており、約45%の外国人材が、退職後も日本での在留を継続していることがわかります。技能実習制度とは異なり、特定技能制度は同一分野内での転職が認められていることが大きく影響しているといえるでしょう。
この結果から、離職を必ずしも悪い意味に捉える必要はなく、企業側が魅力的な労働環境を提供することで、優秀な外国人材を採用できる可能性を示しています。
特定技能外国人の行方不明状況
出入国在留管理庁の調査によると、令和3年(2021年)のデータでは、行方不明者数は全体で76人でした。当時の特定技能外国人数に占める割合でみると0.14%と、極めて低い水準です。

画像引用元:特定技能制度の現状について(出入国在留管理庁)
国籍別ではベトナム人が最も多くなっていますが、特定技能全体の在留者数においてベトナム人が約6割を占めているためであり、国籍による比率の差は大きくありません。ただし、分野別では在留者数の人数と比較して、「農業」や「建設」分野での行方不明者の割合がやや高い傾向にあります。
行方不明の原因には、多額の借金や劣悪な労働環境など、やむにやまれぬ事情が隠れているケースも少なくありません。受入れ機関(受入れ企業)としては、適切な雇用管理と手厚いサポートを行うことで、このような悲しい事態を起こさないように注意しましょう。
特定技能制度の最新運用状況
一部で離職または帰国する動きは見られますが、特定技能制度を利用して日本で働く外国人材の数は年々増え続けています。特定技能制度運用状況の最新データによると、制度が開始された平成31年(2019年)4月以降、特定技能在留外国人数は右肩上がりに推移しており、令和6年(2025年)12月末には28万人を突破しました。

画像引用元:特定技能制度運用状況 (出入国在留管理庁)
このデータからは、日本の深刻な人手不足と、日本で働きたいと思っている外国人材のニーズが合致していることが見てとれます。
今後、政府は2号特定技能外国人の対象分野拡大なども進めており、この流れはさらに加速することが予想されます。特定技能外国人材は、事業を支える上で企業にとってますます重要な要素となってくるでしょう。
特定技能外国人が離職する5つの主な理由
特定技能外国人が離職する背景には、多くの要因があります。労働条件への不満から、言語の壁や生活の不安、より良い条件を提示する企業への転職まで理由はさまざまです。ここからは、外国人材が離職に至る代表的な5つの理由について解説します。
- 労働環境や労働条件への不満
- 賃金水準や待遇への不満
- 言語や文化の壁によるストレス
- 生活面での困難やサポート不足
- キャリアアップやより良い職場を求めての転職
労働環境や労働条件への不満
特定技能外国人が離職する大きな理由として、労働環境や労働条件への不満があります。特に、入社前に提示された条件と、実際の現場でのギャップにより、不満を抱えるケースが多いです。
よくある不満としては、次のようなケースがあります。
- 長時間労働:残業がほとんどないと聞かされていたのに常態化している
- 休日・休暇:週休2日のはずが、人手不足を理由に休みが取れない
- 業務内容:雇用契約(労働条件)にない業務や、過度な負担を強いられる
こうした食い違いは、単なる不満に留まらず、最終的には企業への不信感につながるでしょう。
賃金水準や待遇への不満
賃金や待遇への不満も、外国人材が離職を考える理由になっています。特定技能の報酬は「日本人と同等以上」と定められていますが、実際に手にする金額が外国人材の生活の安定につながるとは限りません。賃金が少ないと感じる理由としては次のものが挙げられます。
- 日本の高い物価や税金、社会保険料の負担が大きい
- 母国の家族への仕送りがあるため、自由に使えるお金が少ない
- 家賃などの生活費の負担が大きい
こうした背景から、手元に残るお金が思ったよりも少ないと感じることがあります。また、昇給の基準が不明確であったり、日本人社員との間に福利厚生の差があったりすると、不公平感がモチベーションの低下につながります。
結果として、より高い給与やより良い待遇を求めて転職する外国人材もいるため、企業には透明性のある評価・報酬制度の運用が求められるでしょう。
言語や文化の壁によるストレス
職場でのコミュニケーションが上手くいかないことで、ストレスが溜まり、離職につながるケースも多いです。特定技能の要件である日本語能力試験(JLPT)N4レベルでは、業務上のやり取りが難しいと感じることもあるでしょう。具体的には、次のような状況で外国人材はストレスを感じることが多いといえます。
- 曖昧な指示:「適当にやっといて」など、日本人特有の曖昧な表現が理解できない
- 専門用語・方言:業務で使う専門的な言葉や、地域の方言が聞き取れない
- 職場での孤立:休憩中の他愛もない雑談や、同僚の会話に入れず孤独を感じている
小さなストレスが積み重なると、「自分はこの職場に受け入れられていない」という孤立感を深めてしまう結果につながります。職場に馴染めないと、モチベーションが低下するため、受入れ機関はわかりやすい言葉で伝える配慮や、孤立させない雰囲気作りを行うことが大切です。
生活面での困難やサポート不足
仕事だけでなく、日本での生活における難しさやサポート体制の不足も、離職理由の一つとして見過ごせません。
慣れない土地での生活は、外国人材にとって不安の連続です。生活面で外国人材が直面する課題には、次のようなものがあります。
- 医療:体調が悪いときに、どの病院を利用すれば良いのかわからない
- 行政手続き:役所などでの行政手続きや税金などの制度がわかりにくい
- 生活ルール:ゴミ出しの分別など日本のルールがわからず近隣トラブルになる
このような課題は、本来受入れ機関や登録支援機関が支援すべきですが、サポート体制が不十分な場合も多いです。相談できる相手がいないと孤独感が増し、仕事への集中力も低下します。
そのため、業務以外での細かなサポートも、外国人材に日本で安定的に働いてもらうためには重要だといえるでしょう。
キャリアアップやより良い職場を求めての転職
これまでのネガティブな理由とは異なり、自分の成長を目的とした「ポジティブな転職」も活発に行われています。実際に、自己都合で離職した人材の約45%は、帰国せずに日本国内で新たなキャリアを築いています。外国人材が転職する主な理由には次のものが挙げられます。
- より高度なスキルや専門知識を習得したい
- リーダー職などへの昇進や昇給が明確に提示されている企業で働きたい
- 長期就労が可能な「特定技能2号」への移行を目指したい
企業が優秀な人材を引き留めるためには、魅力的なキャリアパスや成長機会を提供することが、これまで以上に重要になってくるでしょう。
特定技能外国人の離職を防ぐ方法
特定技能外国人の離職理由の多くは、受入れ機関側の対策で防ぐことが可能です。公平な労働条件の整備、手厚い生活サポート、将来を見据えたキャリア支援などが重要です。
また、自社での対応が難しい場合は、専門機関の活用も有効な手段です。ここでは、離職を防ぐ4つの具体的な方法について解説します。
- 労働条件・待遇の見直しと適正な管理を行う
- 日本語教育や生活サポートを強化する
- キャリア形成・スキルアップを支援する
- 登録支援機関を利用する
労働条件・待遇の見直しと適正な管理を行う
離職の原因となる労働条件への不満を解消するには、公平で透明性のある雇用環境の整備が重要になります。外国人材に「この会社は信頼できる」と感じてもらえれば、長期的な雇用も可能です。
雇用環境の主な改善ポイントは次のとおりです。
- 公平な労働条件:給与や休日などを日本人社員と同等以上に設定する
- 適正な労務管理:残業代の支払いや有給休暇の取得を徹底する
- 分かりやすい説明:雇用契約書の内容を、母国語や簡単な日本語で丁寧に伝える
- 継続的な改善:定期面談で現場の声を聞き、職場環境を見直していく
外国人材も日本人社員と同じように一人の人間です。誠実な対応が企業への信頼につながり、優秀な人材の定着を実現できます。
日本語教育や生活サポートを強化する
職場での孤立感や生活への不安を和らげるには、外国人材への日本語教育や生活サポートの強化が欠かせません。安心して働ける環境は、生活の安定があってこそ成り立ちます。
具体的には、仕事と生活の両面から支援することが大切です。
- 日本語学習の機会提供:オンライン学習の費用補助や、社内勉強会を開催する
- 生活基盤の支援:住居探しの手伝い、銀行口座の開設、病院への同行などを行う
- 多言語対応:重要な行政手続きのマニュアルなどを、母国語で用意する
手厚いサポートを行うことによって、外国人材に「大切にされている」という安心感を与え、仕事へのエンゲージメント(貢献意欲)を高めることになるでしょう。
キャリア形成・スキルアップを支援する
外国人材が「この会社で働き続けたい」と思えるような、キャリア形成・スキルアップを支援することも、外国人材の離職を防ぐことにつながります。キャリアアップ・スキルアップを支援するには、たとえば次のような取り組みが効果的です。
- スキルアップの機会提供:OJT(現場指導)や研修制度を充実させる
- 資格取得の支援:受験費用の一部補助や、試験前の勉強時間を確保する
- 明確なキャリアパスの提示:「特定技能2号」への移行支援や、将来のリーダー候補としてのキャリアパスを提示する
- 公平な評価制度:頑張りが正当に評価され、昇給や昇進につながる仕組みを整える
向上心の高い外国人材は、より好条件の企業へ転職する可能性もあるため、普段からこれらの取り組みを通じて、キャリアパスを明確にすることも大切です。
登録支援機関を利用する
これまで挙げた対策を、すべて自社だけで行うのは難しいケースもあります。その場合、「登録支援機関」に外国人材への支援を委託することも可能です。
登録支援機関は、国の登録を受けた専門機関で、企業に代わって外国人材への支援を行います。登録支援機関に委託できる業務の一例としては、次のものがあります。
- 行政手続き:複雑な在留資格の申請や更新手続きを代行する
- 義務的支援10項目:法律で定められた定期面談や生活オリエンテーションなどを行う
- 生活サポート:病院への同行や役所での手続き補助、生活の相談に対応する
- 日本語教育:学習機会の提供や教材の準備をサポートする
専門家の力を借りることで、企業の担当者の負担を大幅に減らしながら、法令を遵守した質の高い支援を行ってくれます。
しかし、登録支援機関は全国に数多くあり、「どの機関が自社に合っているのか」を見極めることは容易ではありません。採用の段階から入社後の定着支援まで、一気通貫で貴社の課題に寄り添うパートナーをお探しなら、当社株式会社クレイプラスが運営する「外国人材採用ラボ」をぜひご検討ください。
特定技能外国人の離職率改善にお悩みなら「外国人材採用ラボ」がおすすめ
特定技能人材の受け入れは、人手不足に悩む企業にとって有効な手段です。しかし、法律で定められた支援義務や複雑な行政手続きなど、企業側の負担は決して軽くありません。こうした課題を解決し採用を成功させるには、専門家の活用がおすすめです。
最後に、特定技能人材の採用と支援に強みを持つ「外国人材採用ラボ」のサービスを紹介します。
外国人材採用ラボとは
外国人材採用ラボは、株式会社クレイプラスが運営する特定技能人材紹介サービスです。外国人材をただ紹介するのではなく、企業の文化に馴染み、長期的に活躍できる人材との「最適なマッチング」を最も大切にしています。
採用活動から入社後の定着支援まで一気通貫でサポートし、企業と外国人材の双方にとって最高の出会いを創出します。
人材会社として中小企業の人手不足解消にむきあい続けた歴史を持つ
外国人材採用ラボを運営する株式会社クレイプラスは、創業以来、特に地方の中小企業が抱える深刻な人手不足という課題に真摯に向き合ってきました。豊富な経験を通じて蓄積されたのは、人材の数を合わせるのではなく、企業の文化や価値観に本当にフィットする人材を見つけ出すことです。
一社一社の状況や想いを深く汲み取り、長期的に貢献できる人材をご紹介できることが最大の強みです。
マーケティングの力により、幅広く人材を探し出す
「こんな専門スキルを持つ外国人人材はいないだろうか?」そのような企業の期待に応えるのが、外国人材採用ラボのマーケティング力です。独自のネットワークと戦略を駆使し、国内外の優秀な特定技能候補者を幅広くリストアップしています。
特定の国や地域に限定されない多様な人材プールの中から、貴社の要望に応じた最適な候補者を見つけ出します。常に市場の最新動向を捉え、質の高い出会いを創出することで、貴社の採用活動を成功させる一助となるでしょう。
一人ひとりと丁寧に面談を実施している
外国人材採用ラボでは、候補者との面談を何よりも重視しています。スキルや経歴といった情報だけで判断することは決してありません。複数回の丁寧な対話を通じて、仕事への価値観、将来の夢、日本で働くことへの熱意など、対象者の本質にまで深掘りします。
文化や生活習慣の違いについても事前にヒアリングし、受け入れ後のミスマッチを徹底的に防ぎます。この相互理解を大切にする姿勢が、採用後の高い定着率を実現しています。
外国人材の紹介サービス
外国人材採用ラボでは、特定技能人材の採用を成功させるためのサービスを提供しています。企業のニーズに合わせて、即戦力人材の紹介から、受け入れに伴う複雑な手続き・支援業務の代行まで幅広くサポートします。それぞれのサービスを紹介します。
特定技能外国人材の紹介
技能試験・日本語試験の双方をクリアした特定技能人材のみを紹介できることが外国人材採用ラボの強みです。介護、建設、製造、外食といった人手不足が深刻な分野に幅広く対応しており、入社後すぐに現場で活躍できる「即戦力」となる人材との出会いを創出します。
貴社が求めるスキル、経験、日本語レベルを丁寧にヒアリングし、最適な候補者だけを厳選します。採用後のミスマッチをなくし、円滑な業務スタートを力強く後押しします。
一括支援
特定技能人材の紹介だけでなく、受け入れに伴うあらゆる業務をワンストップで代行するのが「一括支援」サービスです。在留資格の申請書類作成から、手数料不要の住居探し、空港への送迎、日本での生活に不可欠なオリエンテーションなど、必要なサポートをすべて代行します。
その結果、受入れ機関の担当者は煩雑な事務作業や支援業務から解放され、外国人材の受け入れ準備や現場での指導に専念できる体制を整えることが可能になります。
まとめ
特定技能人材の離職に関する最新動向と離職理由、企業が実践できる具体的な対策などについて解説しました。
データが示すように、特定技能人材の離職は一定数いますが、多くは日本での就労継続を望んでおり、制度全体の利用者数も増加傾向にあります。離職の主な理由は、労働条件や待遇への不満、言語・文化の壁など、受入れ機関側の環境整備によって改善できるものが大半を占めます。
特定技能外国人の離職を防ぐには、公平な労働条件の提示、手厚い生活サポート、キャリア形成の支援などが有効です。しかし、対策を自社だけで行うことが難しい場合は、「外国人材採用ラボ」のような専門機関の活用をおすすめします。
「外国人材採用ラボ」は、採用から定着支援まで一貫してサポートすることで受入れ機関の負担を軽減し、離職率の改善を実現します。特定技能人材の採用や定着にお悩みの際は、お気軽にお問い合わせください。