
「特定技能で採用した外国人介護人材に、5年後も働き続けてもらうにはどうしたら良いのか?」「特定技能1号は5年までしか更新できないけれど、また新しい人材を探さなければならないのだろうか?」 こうした悩みを抱える企業や施設も少なくありません。
特定技能1号の在留期間は最大5年間と定められており、その後の人材確保や継続雇用の見通しに不安を感じている採用担当者も多いのではないでしょうか?
結論からお伝えすると、採用時点から「5年後」を見据えた育成とキャリア支援の設計が重要です。制度的な制約を理解したうえで、早期からのフォローアップやスキルアップ支援、さらには在留資格「介護」などのキャリアパスへの移行も視野に入れることで、人材の定着と戦力化につながります。
そこで今回は、特定技能「介護」の制度概要を再確認したうえで、外国人材が5年後も安心して働ける環境づくりのために企業が押さえるべき採用・育成のポイントをわかりやすく解説します。
目次
特定技能「介護」の制度と在留期間更新の仕組み
特定技能1号「介護」は、即戦力の外国人材を受け入れる制度でありながら、他分野と比べても制度設計や将来展望に特徴があります。ここでは、対象となる人材の要件や、在留期間更新の仕組み、また「特定技能2号」が存在しないことによる実務的影響について解説します。
特定技能「介護」の概要と対象となる外国人材の要件
特定技能1号「介護」は、介護分野の深刻な人手不足に対応するために創設された在留資格で、一定の専門性と日本語能力を有する外国人材を即戦力として受け入れる制度です。対象者には、介護技能評価試験(または特定技能評価試験)への合格と、日本語能力試験(JLPT)でN4相当以上の日本語力が求められます。
2025年4月の制度改正により、訪問介護への従事も一部条件付きで可能となりましたが、受け入れに際しては企業側に適切な教育や管理体制の整備が求められます。
特定技能「介護」は、介護現場の担い手不足を補う有効な手段である一方、受入れ機関(受入れ企業)には制度の正確な理解と適切な運用が求められます。外国人材が安心して働き、長く活躍できるよう、雇用環境の整備が重要となります。
最大5年間の在留期間と「更新」の仕組み
特定技能1号の在留期間は最長5年で、法務大臣から個々に指定された1年、6ヶ月、または4ヶ月のいずれかの期間ごとに更新されます。在留期間の更新ごとに出入国在留管理庁の審査を受け、雇用契約や勤務状況が確認されます。
在留資格更新の際は、契約内容が実態と一致していることが重要で、業務内容や勤務地、給与の適正性が審査対象です。また、業務内容が特定技能「介護」に合致していることも必要で、周辺業務に偏りすぎると不適切と判断されることがあります。
審査に対応するため、企業は契約や労働条件を適切に整備し、更新時期に合わせて再点検することが求められます。
特定技能2号が介護分野に存在しない理由とその実務的影響
「特定技能2号」は、建設業や製造業など一部の分野で上位資格として位置づけられ、無期限の就労や家族帯同が認められる在留資格です。
しかし、介護分野にはこの「特定技能2号」が制度上存在していません。その理由は、介護分野においては、すでに「介護福祉士」の国家資格を取得することで取得できる在留資格「介護」が設けられているためです。
在留資格「介護」は、専門性の高い国家資格保持者に対して与えられるものであり、取得後は在留期間の更新に制限がなく、また一定の条件を満たせば配偶者や子どもの帯同も可能になります。
そのため、特定技能1号「介護」で就労する外国人材が、日本で同じ介護分野で長く働き続けるには、在留資格「介護」への移行を見据えた支援が必要不可欠です。企業側には、単なる5年間の雇用にとどまらず、その先の定着・キャリア形成を見越した長期的な支援体制の構築が求められています。
特定技能「介護」で雇用した外国人材の5年後のパターン
特定技能1号「介護」の在留期間は最長5年間ですが、その後の進路は外国人材ごとに異なります。在留期間を終えて帰国する人もいれば、引き続き日本で働く道を選ぶ人もいます。ここでは、5年後に想定される主な3つの進路について解説し、企業としてどのような準備や支援が必要かを考察します
- 在留期間満了で帰国するケース
- 在留資格「介護」へ移行するケース
- 日本人もしくは日本永住者の配偶者になるケース
在留期間満了で帰国するケース
最もシンプルなパターンが、在留期間の5年を終えて帰国するケースです。これは、本人が資格移行を希望しない、あるいは国家試験に合格できなかった場合に発生します。
帰国を希望する外国人材に対しては、雇用終了までモチベーションを維持できるよう適切な配慮が必要です。加えて、退職時の手続きや帰国準備(航空券手配、在留資格終了通知など)をスムーズに支援することで、双方にとって良好な関係を保つことができます。
在留資格「介護」へ移行するケース
もっとも理想的なのが、5年以内に介護福祉士国家資格を取得し、在留資格「介護」へ移行するケースです。この資格を取得すれば、無期限での就労が可能となり、家族帯同も申請できます。
企業にとっては、即戦力を長期にわたり確保できる大きなメリットがあります。国家試験合格には3年以上の実務経験が必要なうえ、日本語能力や専門知識も求められるため、早い段階から教育体制を整えることがカギとなります。
日本人もしくは日本永住者の配偶者になるケース
日本で生活を送る中で、日本人や日本永住者と結婚し、配偶者としての在留資格を取得するケースも少なくありません。この場合、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」といった在留資格に変更することで、就労制限がなくなります。
企業としては、本人の家庭事情や希望を尊重しつつ、働き方の見直しや待遇調整など、柔軟な対応を検討することが求められます。
採用段階から考える5年後を見据えた人材選定のポイント
特定技能1号の介護外国人材採用時点で「5年後の定着」を見据えることは、戦略的な外国人材採用において非常に重要です。ここでは、採用時に確認すべき要素や、長期的キャリア設計の考え方、そして「介護資格」移行に向けた体制づくりのポイントについて解説します。
- 経歴・志向・在留資格の適性を見極める
- 定着を見据えたキャリアプランを事前に設計する
- 在留資格「介護」への移行を視野に入れた人材支援体制の準備
経歴・志向・在留資格の適性を見極める
採用時には、候補者の経歴や志向、在留資格の適性を多角的に確認することが重要です。
まずは学歴や職歴、介護現場での実務経験の有無を把握し、即戦力かどうかを判断します。
また、日本語能力については、試験結果だけでなく、現場での会話力や「報・連・相」が可能かを面接で見極めるようにするのも大切なポイントです。
さらに、日本での定住意欲や文化への理解、生活基盤づくりへの意識なども、長期的な雇用を見据える上で大切な指標となります。宗教や食習慣といった文化的背景も、配慮の判断材料として把握しておくとよいでしょう。
特に、介護福祉士資格取得や永住への希望があるかどうかは、中長期的な支援体制を構築するうえで重要な要素です。
定着を見据えたキャリアプランを事前に設計する
外国人材にとって、5年という区切りは非常に大きな意味を持ちます。採用の段階で、5年間のステップアップ計画を共有することで、本人の目標設定と職場への信頼感が高まります。
たとえば、次のように段階的な支援を計画することが、外国人材のモチベーション維持につながります。
時期 | 支援内容 |
---|---|
入社~1年目 | OJT、日常会話力向上、日本語研修の基礎 |
2~3年目 | 介護技能強化、日本語能力試験(JLPT)N3以上取得支援、実務記録の管理 |
4~5年目 | 国家試験対策、模擬試験実施、試験申込サポート |
在留資格「介護」への移行を視野に入れた人材支援体制を準備する
特定技能1号「介護」で就労する外国人材が長期的に日本で働き続けるためには、将来的に在留資格「介護」への移行を見据えた支援体制の整備が重要です。在留資格「介護」へ移行するには、介護福祉士国家資格の取得が必要であり、そのためには計画的なキャリア支援と実務的なバックアップが欠かせません。
まず、受験資格となる「3年以上かつ540日以上」の実務経験を適切に証明するため、勤務実績の正確な管理体制が必要です。有給取得日や複数の事業所での勤務も含め、漏れなく日数を集計できる記録体制を整えることが求められます。
また、学習支援体制の準備も不可欠です。介護福祉士試験の合格に向けて、柔軟なシフト調整による学習時間の確保、外部講師による講習、日本語能力の向上を図る研修、模擬試験の実施など、多面的な支援が効果的です。
さらに、法制度の変更や受験要件の見直しに備え、企業が常に最新情報を把握し、適切なスケジュール管理と書類準備を行うことも、スムーズな資格取得を後押しします。
こうした包括的な支援体制を整えることで、外国人介護人材のキャリアパスを明確にし、企業への長期定着と戦力化につなげることができます。
在留資格「介護」への移行に必要な条件と準備事項
在留資格「介護」への移行は、特定技能1号で雇用された外国人材が5年を超えて日本で就労を続けるための現実的な選択肢です。ここでは、必要な条件や企業が準備すべき事項について解説します。
- 在留資格「介護」の取得に必要な条件を確認する
- 介護福祉士国家試験の受験資格と年間スケジュールを把握する
- 資格取得を支援する教育体制と実務経験を積める体制を整備する
在留資格「介護」の取得に必要な条件を確認する
在留資格「介護」を取得するには、次の3要件を満たす必要があります。
- 介護福祉士国家資格の取得
- 継続的な雇用契約の提示
- 相応の日本語能力(日本語能力試験(JLPT)N2程度が目安)
この在留資格は、家族帯同や在留更新に制限がなく、日本で安定的に生活・就労できるため、本人にとっても魅力的な選択肢です。企業側は早期から要件を確認し、実務・学習の両面から支援体制を整備する必要があります。
介護福祉士国家試験の受験資格と年間スケジュールを把握する
介護福祉士試験を受けるには、「3年以上かつ540日以上」の実務経験と、実務者研修の修了が必要です。試験は毎年1月に筆記が実施され、合否は3月に発表されます。そのため、企業は逆算して年間スケジュールを組み、準備を早めに進めることが大切です。
勤務記録の正確な管理とともに、実務者研修の受講支援や勤務調整も有効です。また、試験勉強のためにシフトを調整したり、勉強会を開いたりすることで、合格率向上につながります。こうした企業の支援は、外国人材の安心感と信頼にもつながります。
資格取得を支援する教育体制と実務経験を積める体制を整備する
介護福祉士を目指す外国人材にとっては、日々の実務経験に加えて、専門知識と日本語能力の強化が必要です。企業は業務に学習を組み込む体制を整え、段階的な支援を行うことが求められます。
たとえば、実務者研修の費用補助で学習意欲を高め、日本語力向上のために最終的には日本語能力試験(JLPT)N2以上を目標とした研修も効果的です。日本語表現力を高めることで、試験対策にもつながります。学習時間を確保するには、柔軟なシフト調整も必要です。
また、模擬試験や過去問を使って理解度を確認し、担当者が定期的に学習状況を把握して助言する体制が有効です。このような取り組みによって、外国人材のモチベーションが向上し、企業としても安定した人材確保が期待できます。
外国人介護人材の戦力化に向けた育成と定着支援の工夫
特定技能人材の定着には、採用後の育成・サポート体制がカギを握ります。ここでは、OJTや生活支援、職場の多文化共生体制について、具体的な取り組み例を交えて紹介します。
- OJTと継続的な教育支援によるスキル向上を図る
- 生活支援・相談体制の整備で離職を未然に防ぐ
- 多文化共生を実現する社内環境づくりと社員教育を実施する
OJTと継続的な教育支援によるスキル向上を図る
外国人介護人材の多くは、採用前に基本的な介護技術や知識を身につけていますが、実際の職場では日本独自のマナーや言い回しに戸惑うこともあります。こうした現場特有のギャップを埋めるには、採用後のOJTと継続的な教育支援が欠かせません。
まず、業務マニュアルや指示書を多言語化することで理解を助け、業務中の混乱を防ぐことができます。特に日本語に不慣れな段階では、視覚的にわかりやすい資料が安心材料になります。
また、教育担当者をあらかじめ決めておくことで、日常的な疑問をすぐに解消でき、精神的な不安も和らぎます。誰に相談すれば良いかが明確であれば、本人の学習意欲も保ちやすくなります。
さらに、一定のタイミングで進捗確認や評価面談を行えば、理解度に応じた支援が可能です。単なる手順の習得にとどまらず、現場での実践力やチームとの連携力も養われていきます。
こうした体制が整えば、外国人材の状況に応じた柔軟な教育が実現し、職場全体のスキル向上にもつながります。
生活支援・相談体制の整備で離職を未然に防ぐ
言語や制度の違いから生じる不安は、外国人材にとって大きなストレス要因となります。こうした不安が蓄積されると、職場への定着が難しくなり、離職につながるリスクも高まります。そのため、離職を未然に防ぐには、生活面での支援と相談体制の整備が不可欠です。
具体的には、まず住居に関するサポートとして、入居契約の手続きに同行したり、企業側で寮を用意したりする対応が求められます。生活基盤を安定させることで、初期の不安を軽減することができます。
また、銀行口座の開設や行政手続きなど、日本独特の仕組みに戸惑う場面では、通訳付きでの同行や必要書類の準備支援が有効です。こうした細やかなサポートが、安心感の醸成につながります。
医療機関の受診に関しても、保険の使い方を説明したり、診察時に必要な情報を事前に伝えたりと、実務的な支援を通じて不安を取り除くことが重要です。
さらに、相談体制の構築も重要な要素です。社内に外国人材専任の担当者を配置したり、外部の相談窓口を紹介したりすることで、問題が大きくなる前に対処できる環境を整えることができます。
このように、日常生活に関する支援と相談体制を充実させることは、外国人材にとっての心理的安全性を確保することにつながります。その結果として、職場への定着率の向上が期待できます。
多文化共生を実現する社内環境づくりと社員教育を実施する
多文化共生を進めるには、外国人材だけでなく日本人職員の理解も必要です。宗教や食習慣など文化の違いを知ることで、職場に相互理解の基盤が育ちます。
異文化研修を実施することにより、価値観や行動様式の違いへの理解が深まります。また、多言語対応の掲示物や業務資料を用意することにより、外国人材が情報を把握しやすい環境を整えることが重要です。
そして、交流イベントや食文化紹介などを通じて、互いの文化への関心と信頼関係を育むことも効果的です。こうした取り組みが、外国人材の安心感とパフォーマンス向上につながります。
外国人材の支援サポートは「外国人材採用ラボ」をご活用ください
特定技能「介護」の外国人材を安定的に受け入れ、5年後の資格移行や長期雇用を見据えるには、制度理解から支援体制の構築まで一貫した取り組みが必要です。
「外国人材採用ラボ」では、こうした課題を抱える企業様に向けて、採用から定着、在留資格「介護」への移行までをトータルで支援できる体制を整えています。最後に、「外国人材採用ラボ」の概要と提供するサービスを紹介します。
外国人材採用ラボとは?
「外国人材採用ラボ」は、株式会社クレイプラスが運営する専門サービスで、特定技能制度に特化した人材紹介と登録支援機関業務をワンストップで提供しています。介護・建設・製造・宿泊など、幅広い業種に対応可能で、全国どこでも柔軟な支援が可能です。
出入国在留管理庁に正式登録された認定支援機関として、特定技能制度に精通した専任のコーディネーターが、外国人材と企業双方に寄り添い、現場へのスムーズな定着をサポートしています。
介護分野での採用支援と教育体制の強み
介護の現場での教育・語学支援・生活フォロー体制における具体的なサポートも実施しています。
具体的には、日本語能力試験(JLPT)N4以上の人材を厳選し、事前に母国語による企業ルールの説明や生活オリエンテーションを実施します。また、入国手続き・住居手配・送迎・生活相談・定期面談といった10項目の法定支援を網羅し、採用直後の定着率向上を支援しています。
在留資格「介護」への移行を見据えた長期的支援の実績
これまで解説したように、長期雇用を実現するには、特定技能1号から在留資格「介護」への移行が重要なステップです。「外国人材採用ラボ」では、介護福祉士国家試験の合格に向けた支援にも注力しています。
実務経験の記録管理、学習スケジュールの調整、模擬試験の実施など、企業と連携しながら着実な資格取得を後押しします。国家資格取得後の在留資格変更についても、書類作成から入管提出まで一貫してサポートしており、これまでにも多数の実績を有しています。
まとめ
特定技能1号「介護」は在留期間に上限があるため、採用時から5年後を見据えた戦略が不可欠です。制度理解を深めたうえで、育成・生活支援・キャリア支援を総合的に実施し、在留資格「介護」への移行を選択肢に含めることで、外国人材の定着と戦力化が可能になります。
外国人材採用ラボでは、そうした企業の皆さまの取り組みをトータルで支援しています。採用から入国手続き、配属後の定着支援、さらには介護福祉士取得・在留資格「介護」への移行まで、経験豊富なコーディネーターが伴走いたします。 「5年で終わらない採用」を実現するために、ぜひ私たちのサポートをご活用ください。