公開日: 2025.06.03
【2025】特定技能では「単純労働」は認められる?原則と例外をわかりやすく解説
特定技能では「単純労働」は認められる?原則と例外をわかりやすく解説

「特定技能で外国人材を雇用したいけれど、単純労働も任せられる?」そんな疑問を抱えている人手不足業界の担当者は多いのではないでしょうか。実際、現場で必要とされる業務は必ずしも高度な技能だけとは限らず、「特定技能=単純労働もOK」と思い込んでいるケースも少なくありません。

しかし、結論からお伝えすると、特定技能は単純労働を目的とした在留資格ではなく、制度上も実務上も一定の制限があるため、誤った理解のまま採用を進めると不許可や制度違反につながるリスクがあります。

そこで今回は、特定技能制度における「単純労働」の定義や制限、実際に現場で許容される業務範囲、業種ごとの具体的な注意点について、採用担当者が押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。制度に沿った適切な運用で、外国人材を安心して受け入れるための参考にしてください。

目次

「単純労働」とは

単純労働とは、特別な技能や経験、学歴を必要とせず、比較的短期間の訓練や指導で遂行可能な作業を指します。

たとえば、工場のライン作業、飲食店の皿洗いや飲食店の皿洗いや皮剥きや盛り付けのみといったようなごく初歩的な調理補助、ホテルのベッドメイキングや清掃、コンビニやスーパーの品出し・レジ打ちといった業務が該当します。

これらの業務は、日本人労働者であればパート・アルバイトとして従事可能なものであり、基本的には外国人材の就労対象とはなりません。在留資格制度の目的が、国の経済・社会への貢献を前提とした専門人材の活用にあるため、単純労働だけを目的とした外国人労働力の導入は、制度の趣旨から外れるとされています。

外国人材が単純労働を原則として認められていない理由

特定技能制度を検討する中で、「単純労働でも人手が足りないのだから、外国人材に任せてもよいのではないか」と考える企業も多いでしょう。しかし、日本の在留資格制度は、単純労働を目的とした外国人の受け入れを原則として認めていません。これは制度の根幹にかかわる考え方であり、単なるルールの問題ではなく、制度の趣旨そのものに根ざした制限なのです。

ここでは、日本が単純労働の受け入れに厳格な姿勢をとる理由と、その背景を在留資格制度の設計思想や法的枠組み、さらには過去の制度運用上の問題点も踏まえて解説します。

  • 在留資格制度は高度人材または専門性をもつ外国人材を対象にしているから
  • 在留資格制度では専門性や技能が求められているから
  • 単純労働を制限する制度的・社会的背景があるから

在留資格制度は高度人材または専門性をもつ外国人材を対象にしているから

日本の出入国管理及び難民認定法(入管法)は、外国人材が国内で就労するための制度として設計されています。その柱となるのが「在留資格制度」であり、許可される在留資格の大半は、いずれも一定の専門性・技能・学歴などを前提とするものです。

たとえば、「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」などは、大学等卒業以上の学歴や実務経験を条件とするもので、単純な作業を行う目的では在留資格の認定が受けられません。制度上、国際競争力のある人材や、先進的な産業を担う力をもつ外国人材の確保が主眼に置かれており、単純な作業のみを行う在留資格は原則として存在しないのです。

在留資格制度では専門性や技能が求められているから

たとえ特定技能であっても、一定水準以上の日本語能力や業務に関する技能評価試験に合格する能力が必要です。「特定技能1号」は、単純労働を例外的に許容しているように見えるかもしれませんが、制度の実態としては明確な技能を有していることが前提とされています。

技能試験は対象となる分野の業務知識や実技を評価するもので、清掃や品出しといった単純な反復作業ではなく、一定以上の判断力・実行力を要する作業の遂行能力を証明することが求められます。

単純労働を制限する制度的・社会的背景があるから

過去に問題となった技能実習制度の「名ばかり実習」や、人権侵害的な労働環境、不法就労問題などを踏まえ、日本政府は単純労働に外国人材を大量動員する制度には慎重です。制度を悪用したブローカーや適正な雇用管理を行わない企業への対策としても、「単純労働の制限」は政策的な抑止力として機能しています。

また、過剰な単純労働従事が生む労働市場の歪み(日本人雇用の圧迫や労働単価の低下など)に対する懸念もあり、外国人雇用に対しては「技能を有する者」「必要な業務に従事する者」であることを明示的に求める方針が続いています。

特定技能制度における単純労働の例外的な取り扱い

「外国人材は単純労働ができない」とされる中で、特定技能制度には一部例外的な位置づけが設けられています。ここでは、特定技能制度がどのように単純労働を一部認めているのか、その理由と運用の考え方を整理します。具体的に、どのような業務が例外的に認められているのかを確認してみましょう。

特定技能制度では一部の単純作業を例外的に認めている

2019年に創設された特定技能制度では、14の特定産業分野において、一定の条件を満たした外国人材が就労できるようになりました。この制度が画期的だったのは、「これまで制度上認められなかった業務の一部」に従事できるようになった点です。たとえば、次のような業務が該当します。

  • 外食業:調理補助や片付けなど
  • 製造業:検品や組立作業など
  • 建設業:資材運搬や土工など

これらは一見「単純労働」と捉えられがちですが、特定技能制度においては「技能業務の一部として位置づけられる限りにおいて」従事可能とされています。要するに、単純労働だけに従事させるのは認められませんが、本来の技能を必要とする業務の付随業務としてなら認められるということです。

例外措置が設けられた背景

特定技能制度は、日本社会の急速な人口減少と高齢化を背景に、慢性的な人手不足を解消するために創設されました。とりわけ中小企業が多数を占める業種においては、人材の採用・育成のいずれも困難で、現場レベルでは単純な労働であっても「担い手がいない」という問題が深刻化しています。

このような事情から、従来の在留資格では就労が認められなかった業務も含め、人手不足が深刻な特定の分野に限り、「技能評価試験+日本語能力試験の合格」という要件のもとで、技能業務の範囲に含まれる一部業務への就労が可能となったのです。

技能業務として認められる範囲

特定技能で認められる業務は、産業分野ごとに明確に定義されています。例として、一部の分野での区分をまとめると下の表のようになります。

業種技能業務の例認められない単純労働の例
介護身体介護(入浴・食事介助)清掃・洗濯・買い物のみの業務
外食業調理補助・接客食器洗いのみ、仕込みのみ
宿泊業フロント、宴会接客、部屋管理業務清掃だけ、荷物運搬だけ
建設業型枠、鉄筋、コンクリート施工型枠、鉄筋、コンクリート施工
製造業組立、溶接、検査工程梱包作業のみ、運搬作業のみ

特定技能制度では、「単純労働の付随業務としての従事」は一定程度認められることもありますが、それが主たる業務である場合は不適切と判断されるおそれがあります。

業種別に見る許容される業務と単純労働の境界線

特定技能制度においては、業種ごとに「技能」とみなされる業務と、制度上認められない「単純労働」の境界が異なります。ここでは、主要な対象業種を取り上げ、それぞれの実務における判断ポイントを整理します。

「介護」における単純労働との線引きの考え方

介護分野においては、「身体介護」が技能業務として明確に定義されています。

入浴、排泄、食事の介助など、利用者の身体に直接関わる業務が中心となり、それらを担えることが「特定技能介護」で求められる技術です。

一方で、清掃・洗濯・ベッドメイキングといった業務は、あくまで補助的な位置づけです。これらの業務のみを外国人材に任せることは制度違反と見なされる可能性があるため、主たる業務が身体介護であることを明確に示す必要があります。

「外食業」「宿泊業」における業務範囲

外食業では、調理補助・接客サービス・レジ対応などが技能業務とされる場合がありますが、単なる皿洗いや下処理のみに従事する調理補助は単純労働とみなされ、就労資格の対象外となります。

また、宿泊業でも、チェックイン業務や館内案内、宴会運営などの業務が認められる一方で、ベッドメイキングや荷物運搬のみでは技能業務とはされません。

これらの分野では、業務が多岐にわたるため、担当業務の比重を記録し、就労範囲が制度内に収まっていることを証明できるようにしておくことが重要です。

「建設業」「製造業」で技能業務と単純作業を区別する視点

建設業では、型枠施工や鉄筋加工、左官など明確な技能を伴う業務が対象です。単純な資材運搬や清掃といった単純労働だけを行わせている場合、技能業務と認定されないリスクがあります。

製造業でも、NC旋盤の操作や溶接、検品といった工程管理業務が技能業務にあたり、単なる梱包や仕分けといった単純労働のみでは制度違反となる場合があります。

実務上の「補助的業務」が主業務にならないよう、職務内容のバランスを取ることが求められます。

特定技能制度違反につながるリスクと企業側の注意点

特定技能の受け入れにおいて、制度に反する業務に従事させると、在留資格の取り消しや、次回の在留期間更新時に不許可となるリスクがあります。ここでは、特定技能制度違反につながるリスクと企業側の注意点について解説します。

許容範囲を超えた単純作業を行わせた場合のリスク

制度で定められた業務範囲を逸脱し、外国人材を本来認められていない単純労働に従事させた場合、さまざまなリスクが発生します。

まず、次回の在留期間更新時に不許可となる可能性があり、外国人材が継続して就労できなくなるリスクが生じる恐れがあります。また、過去の制度違反を理由に技能実習制度や特定技能制度の新規受け入れが停止されることもあります。さらに、出入国在留管理庁による立入検査や報告命令などの監査・指導の対象となることがあり、企業としての信頼を損なう結果にもつながります。

このような事態は、外国人材本人の将来に深刻な影響を与えるだけでなく、企業の事業継続や対外的な信用にも大きな打撃となるため、制度の正確な理解と厳格な運用が求められます。

制度違反が原因で発生した実際のトラブル事例

制度違反が原因で発生した実際のトラブル事例を2つ紹介します。

事例1:宿泊業で採用した外国人材に、日常的に清掃業務のみを行わせていたことが問題視され、出入国在留管理庁からの調査・指導を受け、制度違反と認定された事例があります。結果として、翌年以降の特定技能外国人材の受入れが停止されました。

事例2:製造業で採用した人材に、技能試験に基づく業務ではなく、主に搬送・梱包業務だけを任せていたことで、契約内容との不一致が指摘された事例があります。結果として、雇用契約の見直しと改善報告を求められました。

リスク回避のためには契約書や支援計画書で業務内容を明確にする

受入れ機関(受入れ企業)は、外国人材の業務内容を雇用契約書と支援計画書において明文化することが義務付けられています。

具体的には、まず主たる業務として従事させる内容が、制度上求められる技能要件を満たしていることを明記する必要があります。また、清掃や運搬といった補助的業務については、その比率や業務の位置づけを文書上で明確に区別して記載しなければなりません。

さらに、日々の業務の実施状況について記録を残し、それが契約書や支援計画書に記載された内容と一致しているかを定期的に確認する体制を整えることが重要です。

これらの対応を徹底することで、在留資格制度違反のリスクを回避し、適正な雇用管理を実現することができます。

特定技能制度の適正な運用に向けた外国人材受け入れの実務ポイント

制度違反を防ぎ、外国人材が安心して働ける職場環境を整えるには、業務管理や支援体制、多文化対応までを含めた実務的な工夫が必要です。ここでは、現場で求められる適切な運用のための具体的なポイントを解説します。

  • 業務範囲を明確に説明して適切に管理する
  • 支援体制を整備し適正に運用する
  • 多文化共生に向けた職場づくりを工夫する

業務範囲を明確に説明して適切に管理する

採用後のオリエンテーションにおいて、外国人材に対して業務範囲を丁寧に説明することは、制度の趣旨に沿った運用を行うための基本です。

業務範囲の説明が不十分なまま現場に配置すると、制度違反となる単純労働に従事させてしまうリスクが高まります。特に、複数の業務を兼務するような現場では、どの業務が技能業務であり、どの業務が補助的な位置づけなのかを、実務レベルで明確に管理しておく必要があります。

そのためには、多言語対応の業務マニュアルを整備し、視覚資料や動画を活用して具体的に業務内容を伝えると効果的です。加えて、日常的な指示や記録にも一貫性を持たせ、逸脱が起きないよう管理体制を構築することが求められます。

支援体制を整備し適正に運用する

受入れ機関には、特定技能人材に対して日本語学習の機会を提供し、生活に関する相談窓口を設置し、さらに社会保障や税制度などに関する情報を適切に提供する義務があります。これらの支援は、外国人材が日本で安心して働き生活するうえで不可欠なものであり、制度上も明確に求められている内容です。

なお、自社で支援体制を整える場合は、登録支援機関に準ずる水準の対応が求められます。必要に応じて一部の業務を外部の専門事業者に委託することも可能ですが、企業自らが支援責任を負うことに変わりはありません。

支援内容や運営体制に不安がある場合は、支援業務全般を登録支援機関に委託する方法も検討すべきでしょう。

多文化共生に向けた職場づくりを工夫する

外国人材の長期的な定着には、就労環境だけでなく、職場全体の文化的な受け入れ姿勢が大きな影響を与えます。国籍や宗教の違いに対する理解を深めるとともに、職場内での対話の機会を増やし、お互いの価値観を尊重し合える雰囲気をつくることが大切です。

たとえば、ハラール対応の社食メニューの導入や、宗教上の祝日に配慮した勤務シフト、年末年始やお盆時期の説明など、小さな配慮の積み重ねが信頼につながります。また、外国人材に向けた異文化理解研修や、管理職層へのマネジメント教育を実施することも効果的です。

多文化共生を実現する職場環境づくりは、離職率の低下や企業全体の国際対応力向上にもつながります。

外国人材の支援サポートは「外国人材採用ラボ」をご活用ください

特定技能外国人材の受け入れは、人手不足解消の有効な手段ですが、煩雑な手続きや支援業務など、企業側の負担も大きいです。その場合、専門的な知識やノウハウを持つサービスを活用することで課題を解決し、スムーズな外国人材の受け入れを実現できます。最後に、特定技能人材の採用と支援に強みを持つ「外国人材採用ラボ」のサービスを紹介します。

外国人材採用ラボとは

外国人材採用ラボは、株式会社クレイプラスが運営する、特定技能をはじめとした外国人材の紹介・支援に特化したサービスです。人材を紹介するだけでなく、企業の文化やニーズに合致し、長期的に活躍できる人材とのマッチングを重視しています。

長年培ってきた人材紹介のノウハウと独自のマーケティング力、丁寧な面談を通じて、企業と外国人材双方にとって最良の出会いを創出することを目指しています。

人材会社として中小企業の人手不足解消にむきあい続けた歴史を持つ

外国人材採用ラボの運営母体である株式会社クレイプラスは、長年にわたり地方の中小企業が直面する深刻な人手不足の解決に取り組んできました。労働力を補充するだけでなく、企業文化に適した、長期的に活躍できる人材の採用を重視しています。

全業種対応の人材紹介事業(HR事業)も展開しており、各企業の状況や求める人物像を深く理解し、最適な人材を提案できる点が強みです。

マーケティングの力により、幅広く人材を探し出す

外国人材採用ラボは、独自の採用ルートとマーケティング戦略を駆使し、国内外から優秀な特定技能の候補者情報を幅広く収集しています。特定の国や地域に偏ることなく、多様なスキルや経験を持つ人材を確保し、企業の細かな要望や専門的なニーズにも対応可能です。

常に最新の市場動向を把握し、より質の高い人材を獲得するための新たな採用ルートの開拓にも力を入れています。

一人ひとりと丁寧に面談を実施している

外国人材採用ラボでは、候補者一人ひとりとじっくり向き合う面談を重視しています。たとえば、書類選考だけではわからないスキルや経験、仕事に対する価値観、日本で働きたいという熱意などを理解するよう努めています。

また、外国人材と複数回の面談を実施しているため、外国人材と受け入れ企業双方の、「こんなはずではなかった」というミスマッチを最小限に抑えられるのも、私たちの強みです。

外国人材の一括支援サービス

外国人材採用ラボでは、特定技能外国人材の受け入れに伴う手続きや法律で定められた支援義務をまとめて代行する「一括支援サービス」も提供しています。

在留資格関連の申請書類作成から、住居の確保、入国時の空港送迎、生活オリエンテーションの実施といった多岐にわたる業務をワンストップでサポートいたします。その結果、企業の担当者は複雑な事務作業や支援業務から解放され、外国人材の受け入れ準備や現場での指導など、コア業務に専念できるでしょう。

まとめ

特定技能制度は、日本の深刻な人手不足に対応するために創設された制度ですが、外国人材の受け入れには制度上の厳格なルールと、誤解しやすい落とし穴が存在します。

特に「単純労働ができるのか」といった疑問は人手不足に悩む多くの企業が抱えるテーマですが、特定技能制度では業務範囲が厳密に定められており、原則として単純労働のみを目的とした雇用は認められていません。適切な制度理解と実務対応が、外国人材との信頼関係を築き、長期的な人材定着にもつながります。

「外国人材採用ラボ」は、特定技能制度に対応した採用支援・書類作成・支援計画の策定・生活支援までをトータルでサポートしています。「何が単純労働にあたるのか」「この業務は制度上問題ないのか」といったご相談から、運用後のトラブル予防まで、豊富な実績と最新の制度知識をもとに、企業様の人材活用をしっかりと支援いたします。

特定技能外国人材の受け入れをご検討中の企業様は、お気軽に外国人材採用ラボまでお問い合わせください。

セミナー情報

Seminar