公開日: 2025.05.22
【2025】特定技能と技能実習の違いは?制度の違いをわかりやすく解説
特定技能と技能実習の違いは?制度の違いをわかりやすく解説

「特定技能と技能実習という在留資格は、何がどう違うのだろう?」そんな疑問を持っている企業の採用担当者の方も少なくありません。在留資格の制度は複雑で、違いを理解していないと適切な人材活用や雇用管理が難しくなる恐れもあります。

「特定技能」と「技能実習」は、目的も制度の仕組みも大きく異なる在留資格です。特定技能は即戦力となる外国人材の受け入れ制度であるのに対し、技能実習は本来「国際貢献」を目的とした制度で、役割や制限にも大きな違いがあります。

今回は、2025年の最新の制度動向も含めて、特定技能と技能実習の違いをわかりやすく解説します。さらに、採用担当者が押さえておくべき在留資格ごとの特徴、メリット、デメリット、採用時の注意点も詳しく紹介します。初めて外国人材を採用する場合にも、これまでの採用を検討する場合にも役立つ内容です。

「特定技能」と「技能実習」の違い

まずは、「特定技能」と「技能実習」の目的や、制度の違いについて解説します。外国人材の採用を考える際、自社の場合にはどちらが最適なのか検討する参考になります。

特定技能とは

特定技能とは、日本国内の人手不足が深刻な産業分野において、一定の技能と日本語能力を有する外国人を受け入れるための在留資格です。深刻化する人手不足を解消し、日本社会の活性化を図ることを目的として創設されました。

特定技能は、即戦力となる外国人材を比較的長期にわたり受け入れることができる点が特徴です。対象となる特定産業分野は、介護、建設、農業、宿泊、飲食料品製造業など、多岐にわたります。

特定産業分野

特定技能1号特定技能2号
・介護
・ビルクリーニング
・工業製品製造業
・建設
・造船・船用工業
・自動車整備
・航空
・宿泊
・自動車運送業(2024年追加)
・鉄道(2024年追加)
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業
・林業(2024年追加)
・木材産業(2024年追加)
・ビルクリーニング
・工業製品製造業
・建設
・造船・船用工業
・自動車整備
・航空
・宿泊
・農業
・漁業
・飲食料品製造業 ・外食業

技能実習とは

技能実習は、技能を身につけたい外国人材が日本の企業で働きながら、日本の技術・知識を習得し、母国の経済発展に役立てることを目的とした制度です。

技能実習生は、雇用関係の元で、定められた期間、技術の習得に励みます。もともと「国際貢献」を掲げた制度として設けられました。

両者の制度目的と位置付けの違い

特定技能は、「日本国内の労働力確保」を目的とし、実質的に外国人を即戦力の労働力として受け入れる制度です。一方、技能実習は「発展途上国への技術移転」を目的とした制度で、原則的に外国人が技能を習得し帰国することを前提としています。

この目的の違いにより、在留期間、雇用条件、技能レベル、日本語能力など、制度運用に大きな差異があります。

採用担当者が押さえるべき「特定技能」と「技能実習」の違い

この章では、採用時に重要となる各項目について、「特定技能」と「技能実習」の違いを表で比較しながら解説します。それぞれの違いを理解することで、自社にとってどちらの制度が適しているかを判断しやすくなります。

比較項目特定技能技能実習
制度目的労働力の確保
(国内人材不足の補填)
技術移転・国際貢献
在留期間1号:最長5年
2号:更新可・永住可能
原則3年(職種によって5年)
雇用形態企業との直接雇用企業との雇用契約
(監理団体の関与必要)
労働条件日本人と同等以上の条件技能習得が前提のため、配慮が必要な場合もある
日本語要件日本語試験合格が必要
(N4相当以上)
入国時は基礎的な日本語が求められる程度
技能水準試験により確認済みの即戦力入国後に段階的に習得
支援体制登録支援機関による支援あり監理団体による監督と支援
転職の可否原則として同一分野内で可能原則不可
(制度趣旨に反するため)
永住の可能性特定技能2号取得者は永住申請可能永住申請不可
(帰国前提)

在留期間の違い

特定技能の在留期間は、特定産業分野や個々の状況によって異なりますが、1号は最長5年、2号は更新が可能で、要件を満たせば永住も可能です。

一方、技能実習の在留期間は原則として最長3年(一部職種では5年)と定められており、期間満了後の更新は基本的に認められていません。

雇用契約の有無と労働条件の違い

特定技能は、日本の企業との直接的な雇用契約に基づき就労します。労働条件は日本人の正社員と同等以上であることが求められ、労働基準法などの労働関係法令が適用されます。

一方、技能実習生も日本の企業と雇用契約を結びますが、技能習得を主な目的とするため、労働時間や業務内容などに一定の配慮が求められる場合があります。

日本語能力や技能水準の要件

特定技能では、一定の日本語能力と技能水準が求められます。日本語能力は、日常生活や業務に必要なコミュニケーション能力を測る試験に合格する必要があります。技能水準は、各特定産業分野が定める試験や評価に合格することで証明されます。

一方、技能実習では、入国時に一定の日本語能力は求められますが、特定技能ほど高いレベルは要求されません。技能水準は、実習を通じて段階的に習得していくことが前提となっています。

支援期間や監理団体の役割の違い

特定技能で外国人材を受け入れる企業は、外国人材に対する生活や業務に関する支援計画を作成し、適切に実施する義務があります。必要に応じて、登録支援機関に支援を委託することも可能です。

一方、技能実習制度では、監理団体が技能実習生の受け入れ企業を指導・監督し、技能実習生の保護や技能習得の支援を行います。監理団体は、技能実習制度の適正な運営において重要な役割を担っています。

永住・転職の可能性に関する違い

特定技能2号の在留資格を取得した外国人材は、要件を満たせば永住許可を申請することが可能です。また、特定技能1号の在留資格を持つ外国人材も、同一の特定産業分野内であれば転職が原則として認められています。

一方、技能実習生は、原則として在留期間中の転職は認められていません。技能実習の目的が技能習得であるため、安易な転職は制度の趣旨に反すると考えられています。

実務目線における「特定技能」のメリット・デメリット

ここでは、特定技能制度を活用する場合に企業が得られるメリットと注意すべき課題について、実務目線で解説します。

メリット

特定技能での採用の最大のメリットは、即戦力となる外国人材を比較的長期にわたって雇用できることです。人手不足が深刻な分野において、安定的な労働力の確保につながる制度になっています。

  • 即戦力としての人材確保が可能である
  • 長期雇用・定着の可能性が期待できる
  • 深刻な人手不足の解消が期待できる
  • 社内の活性化が期待できる

即戦力としての人材確保が可能である

特定技能外国人は、事前に技能試験や日本語試験に合格しているため、業務にすぐに対応できるスキルと語学力を備えています。これにより、入社後の教育負担を軽減でき、短期間で業務に慣れてもらうことが可能です。

長期雇用・定着の可能性が期待できる

特定技能1号から特定技能2号への移行や、将来的な永住申請が可能であるため、企業は中長期的に人材を確保することができます。そのため、労働力の安定的な確保に寄与します。

深刻な人手不足の解消が期待できる

建設・介護・宿泊など慢性的な人手不足に直面している業種では、特定技能外国人の雇用が喫緊の課題を解決する糸口になります。専門的な技能をもつ人材の確保と定着が期待できます。

社内の活性化が期待できる

異なる文化や価値観を持つ外国人材の受け入れによって、社内のコミュニケーションの向上や活性化が期待できます。多様性が社員の視野も広げ、海外展開や海外進出の契機となるかもしれません。

デメリット

特定技能のデメリットは、受け入れ企業の負担が小さくないところです。そういった部分も理解して導入を考えることが必要でしょう。

  • 外国人材の定着・育成に工夫が必要
  • 分野別要件・制度運用に対する負担が大きい
  • 導入コストと書類対応の負担がある

外国人材の定着・育成に工夫が必要

特定技能で採用した外国人材は、必ずしも長期的に定着するとは限りません。文化や習慣の違い、コミュニケーションの課題、キャリアパスの不明確さなどが離職につながる可能性があります。企業は、外国人材が安心して働ける環境整備や、キャリアアップの機会を提供することが重要です。

分野別要件・制度運用に対する負担が大きい

特定技能には、各特定産業分野ごとに細かな要件が定められています。企業はこれらの要件を正確に理解し、適切な受け入れ体制を構築する必要があります。

申請書類の準備や各種手続きも煩雑になる場合があり、担当者の負担が増加する可能性があります。また、登録支援機関の選定や契約管理など、実務面での煩雑さが伴います。

導入コストと書類対応の負担がある

入国前後の支援義務や、行政手続きに関わる書類作成・申請にはコストと時間がかかります。制度理解不足による申請ミスや不備は、採用スケジュールに影響を与えることもあります。

実務目線における「技能実習」のメリット・デメリット

続いて、技能実習制度を導入する際の企業側のメリットと注意点を、実務的な観点から整理します。

メリット

技能実習制度のメリットには、主に次のような点が挙げられます。自社の状況に合っているかよく考えましょう。

  • 人件費を抑えた人材確保が可能である
  • 対象職種が多く企業が利用しやすい
  • 社内が活性化しやすい

人件費を抑えた人材確保が可能である

受け入れ制度の構造上、技能実習生は相対的に低コストで雇用できるケースが多く、一定期間安定的に人材を確保できるというメリットがあります。特に中小企業にとっては、採用コストの軽減につながります。

対象職種が多く企業が利用しやすい

技能実習制度は、製造業、建設業、農業など、人材不足の幅広い職種で受け入れが可能です。そのため、多くの企業にとって導入のハードルが比較的低くなっています。

社内が活性化しやすい

海外からの技能実習生を受け入れることで、社内に新しい価値観や文化がもたらされ、社員間のコミュニケーションの活性化や意識改革にもつながるケースがあります。

デメリット

続いて、技能実習制度のデメリットも整理しておきましょう。デメリットを理解しておくことで、導入後のトラブルを未然に防ぐことができます。

  • 原則として転職不可
  • 定着しづらく長期雇用が難しい
  • 外部コストがかかる

原則として転職不可

技能実習制度は実習先の企業のみに対して許可された在留資格であるため、たとえ企業とのミスマッチが生じても、原則として転職は認められていません。このことがトラブルの要因となることもあります。

定着しづらく長期雇用が難しい

技能実習は、制度上帰国を前提とした一時的な滞在資格であり、最長でも5年で帰国しなければなりません。せっかく戦力となっても、契約満了後に退職しなければならない点は企業にとってのデメリットです。

外部コストがかかる

受け入れには監理団体を介する必要があり、その分の費用がかかるほか、監理団体との連携業務にも一定の工数が発生します。また、制度運用の適正化に対する行政の監視も年々厳格化しており、体制整備が求められます。

【2025年最新】技能実習制度の現状と見直しの動き

続いて、技能実習制度が抱えてきた課題、それに対する政府の改革の方向性、そして新たに導入される「育成就労制度」の概要について解説します。

技能実習制度のこれまでの課題

技能実習制度は、1993年に国際貢献を目的として創設されましたが、実際には次のような問題が指摘されてきました。

  • 労働力としての利用:制度の趣旨とは異なり、実習生が低賃金で単純労働に従事させられるケースが多く報告されています。
  • 人権侵害:長時間労働、賃金未払い、暴力やセクハラなど、実習生の人権を侵害する事例が後を絶ちません。
  • 失踪問題:過酷な労働環境や低賃金から逃れるため、実習生が失踪するケースが増加しています。

これらの問題により、技能実習制度は国内外から批判を受け、制度の見直しが求められていました。

政府による制度改革の方向性と最新動向

これらの課題を踏まえ、政府は技能実習制度の廃止と新たな制度「育成就労制度」への移行を決定しました。

  • 法改正の成立:2024年6月14日、技能実習制度に代わる「育成就労制度」を創設するための関連法の改正が国会で可決・成立しました。
  • 制度の目的の変更:新制度では、従来の「国際貢献」から「人材育成と確保」へと目的が変更され、特定技能1号水準の技能を有する人材の育成を目指します。
  • 施行時期:育成就労制度は、2027年4月からの施行が予定されており、3年間の移行期間を経て、2030年までに完全導入が見込まれています。

育成就労制度の内容説明

育成就労制度は、技能実習制度の問題点を改善し、外国人材の権利保護とキャリア形成を支援することを目的としています。主な特徴は次のとおりです。

在留期間原則3年で、特定技能1号への移行を前提としています。
転籍の容認一定の条件下での転職(転籍)が認められ、実習生本人の適性や希望に応じた配置転換が可能になります。
日本語能力の重視入国時にJLPT N5程度、移行時にJLPT N4相当以上の日本語能力が求められ、職場での意思疎通や安全指導がスムーズになることが期待されます。
不正・搾取の抑制送り出し段階から二国間協定国に限定し、手数料の上限や透明化などルール整備が行われる見込みです。
キャリアパスの明確化育成就労制度の導入により、特定技能から高度人材へといった外国人のキャリアパスが見えやすくなります。

今後の採用方針に与える影響

育成就労制度の導入により、企業の採用方針にも変化が求められます。主な影響は次のとおりです。

影響概要
受け入れ体制の整備育成就労計画の策定と認定を受ける義務があるため、企業は受け入れ体制の整備が必要です。
教育支援の強化日本語能力や技能習得を支援するための教育体制の構築が求められます。
人材流出リスクへの対応転籍が可能になることで、人材流出のリスクが増大するため、労働条件や待遇の改善、キャリアアップの機会提供など、優秀な人材の定着策を講じる必要があります。

これらの変化に対応するため、企業は早期の準備と体制整備が求められます。

外国人材の採用におけるポイント

外国人材の採用を成功させるには、制度の違いを理解するだけでなく、自社のニーズや受け入れ体制を明確にすることが重要です。ここでは、採用担当者が押さえるべきポイントを解説します。

  1. 採用の目的や求める人材像を明確にする
  2. 専門家によるサポートを受ける

採用の目的や求める人材像を明確にする

特定技能と技能実習(今後の育成就労制度を含む)には、それぞれ異なる目的と特徴があります。自社の採用目的や求める人材像に応じて、適切な制度を選択することが重要です。

採用目的適切な制度
即戦力となる人材を確保し、長期的な戦力として育成したい特定技能制度
育成を通じて将来的な海外展開も視野に入れている場合技能実習制度(育成就労制度)

採用前に、自社のニーズや受け入れ体制を明確にし、制度の選択を検討しましょう。

専門家によるサポートを受ける

外国人材の採用には、在留資格の申請や受け入れ準備など、多くの手続きが伴います。特に在留資格の申請には専門的な知識が求められるため、行政書士や登録支援機関などの専門家のサポートを受けることをおすすめします。

また、入国後の生活支援や職場環境への適応支援も、外国人材の定着には不可欠です。専門家のサポートを活用し、円滑な受け入れ体制を構築しましょう。

特定技能人材の採用なら「外国人材採用ラボ」をご活用ください

株式会社クレイプラスが運営する「外国人材採用ラボ」は、貴社の人手不足解消と事業成長を強力にサポートします。最後に、即戦力となる特定技能人材の採用をご検討中の企業の方に向けて、外国人材採用ラボの概要と、提供するサービスを紹介します。

外国人材採用ラボとは

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まとめ

「特定技能」と「技能実習」という2つの在留資格制度について、それぞれの制度目的、仕組み、雇用形態、在留期間、転職や永住の可否などの違いについて解説しました。

今後、外国人材の受け入れ環境はますます重要になります。採用担当者の皆様は、制度の違いと運用実務を正しく理解し、自社のニーズに合った戦略的な採用体制の構築を検討していくことが求められます。

外国人材の採用に関する制度変更や手続きの複雑化が進む中、信頼できるパートナーとの連携を強化し、外国人材が安心して活躍できる職場づくりを目指しましょう。

「外国人材採用ラボ」では、長年培ってきたノウハウと独自のネットワークを活かし、特定技能外国人材の紹介から受け入れ後の支援まで、一括でサポートします。自社での支援体制に不安をお持ちだったり、質の高いサポートを目指したかったりする企業担当者様は、ぜひ一度お問い合わせください。貴社の状況に合わせた最適なプランをご提案し、外国人材活用を支援します。