
日本の介護現場では、少子高齢化の進展に伴い深刻な人材不足が続き、今後の介護需要に日本人労働力だけでは十分対応できない状況になっています。そのため、技能実習や特定技能、介護福祉士、EPAなどの在留資格を持つ外国人介護士の受け入れが注目され、多くの施設で採用が進んでいます。
しかし、制度・文化・言語などの違いを踏まえた対応が不可欠で、中でも給与設計は外国人材の確保と定着に直結する重要な要素です。適切な給与水準が示されなければ、応募不足や採用直後の離職・トラブルのリスクが高まります。
今回は、外国人介護士の給与相場や法的留意点、人材の定着との関係性、実務で役立つ給与設計のポイントを解説します。
目次
外国人介護士を採用する前に知っておきたい基本情報
介護業界の人材不足が深刻化する中、外国人介護士の採用が重要な解決策となっています。技能実習や特定技能、介護福祉士、EPAなどの在留資格を活用し、多くの施設で受け入れが進んでいます。
採用を成功させるには、制度理解や給与設計、文化的配慮が欠かせません。ここでは、外国人介護士の制度と給与の基本について簡潔に解説します。
人手不足が深刻化する介護業界と外国人材採用の現状
日本の介護業界では、少子高齢化の進行により、介護を必要とする高齢者が急増しています。一方で、若年層の人口減少や他業種への人材流出により、介護職に従事する人材の確保がますます困難になってきました。
この人手不足は一時的な問題ではなく、今後も長期的に続くと考えられており、特に地方の中小規模施設では、慢性的な人材難に陥っているケースも少なくありません。
こうした状況を受け、日本政府は介護分野の外国人労働者受け入れを本格化させました。2017年には技能実習制度に介護職種を追加し、2019年には特定技能制度を創設しました。さらに、国家資格である介護福祉士の取得を通じて、在留資格「介護」による外国人材雇用の道も整備されています。
これにより、実際に外国人介護士を採用する施設は年々増加しており、外国人材が介護の現場で働く光景も珍しいものではなくなっています。しかしながら、採用が進む一方で、入職後すぐに退職してしまったり、制度の運用に不備があったりするなどの課題も見受けられます。
制度の知識不足や、文化・言語面のギャップが原因でトラブルが発生するケースも少なくありません。採用が順調であっても、戦力として定着するまでには、多くの工夫と支援が必要であることを理解しておく必要があります。
採用担当者が押さえておきたい「在留資格」の基礎知識
外国人介護士として日本で働くには、目的に応じた在留資格が必要です。2025年7月現在、介護分野での就労に活用されている主な在留資格には、次の4つがあります。
- 技能実習
- 特定技能
- 介護(介護福祉士)
- EPA(経済連携協定)
在留資格ごとに、就労可能期間や待遇条件、給与の取り扱いに大きな違いがあります。採用担当者は制度の枠組みを正確に把握した上で、適切な給与設計や人事制度を整えることが求められます。
技能実習制度
技能実習制度は、開発途上国の人材育成を目的とした制度で、介護職種では2017年から受け入れが可能となりました。原則として最長3年の実習期間が設けられており、延長手続きを行うことで最大5年までの在留が可能です。
実習であっても日本人と同等以上の賃金を支払う義務があり、待遇の公平性が求められます。
特定技能制度
特定技能制度は、介護業界の深刻な人手不足を背景に設けられた制度です。介護分野においては、技能評価試験と介護日本語評価試験、そして日本語能力試験(N4相当)に合格することで、通算5年間の就労が認められます。
報酬は「同等性の原則」に基づき、日本人と同じ水準が求められます。
介護(介護福祉士)
外国人材が日本国内で介護福祉士の国家資格を取得した場合、「介護」の在留資格が付与されます。この資格は更新制ではあるものの、在留期間に上限がなく、安定的な長期雇用が可能です。
給与や昇給・賞与面でも他の在留資格に比べて安定しており、将来的なキャリア形成にも適しています。
EPA(経済連携協定)
EPAは、日本とフィリピン・インドネシア・ベトナムなどとの経済連携協定に基づき、看護師・介護福祉士候補者を受け入れる制度です。来日後に日本語研修を受けながら、国家試験合格を目指します。
合格すれば介護福祉士として就労・在留が可能です。ただし、国家試験に不合格となった場合は在留継続が困難となる場合があるため、採用には一定のリスクも伴います。
給与設計が採用・定着を左右する理由
外国人求職者にとって、給与条件は求人選定における最重要項目の一つです。生活基盤を日本で築こうとする中で、提示された給与額が母国の平均と比較しても納得できる水準でなければ、そもそも応募の意欲が湧きません。
仮に採用に至ったとしても、給与が本人の期待と大きくかけ離れていれば、早期離職やモチベーションの低下といった問題が発生します。また、給与条件の不満は現場の人間関係にも悪影響を及ぼし、外国人介護士だけでなく、他の日本職員との摩擦の原因にもなりかねません。
さらに、日本の労働環境においては「同一労働同一賃金」の原則が定着しつつあります。同じ職務を行っているにもかかわらず、国籍によって賃金に差がある場合、法的な問題を引き起こす可能性も否定できません。
こうした状況を踏まえると、給与設計は単なる数値の設定ではなく、採用率・定着率・職場の安定性を大きく左右する経営戦略の一部と捉える必要があります。採用時には適切な給与体系を提示し、入職後はキャリアに応じた昇給制度を整備することで、職員のモチベーション向上と長期定着に繋げていくことが重要です。
外国人介護士の給与相場
外国人介護士の雇用にあたっては、在留資格ごとに異なる給与相場を把握することが重要です。ここでは、技能実習・特定技能・介護福祉士・EPAの4つの在留資格について、平均給与や待遇の違いを整理し、それぞれの特徴や雇用にあたっての留意点も含めて、採用時の参考となる情報をまとめます。
技能実習・特定技能・介護福祉士別の給与水準
外国人介護士の給与は、在留資格の種類によって異なります。
技能実習制度
技能実習制度で働く実習生の月給は、総支給額で18〜20万円程度が一般的な相場とされています。ただし、ここから社会保険料や技能実習にかかる費用、住居費などが控除されるため、実際の手取りは15万円前後になることが多いのが実情です。
特定技能制度
特定技能資格を持つ介護士の場合、給与水準は技能実習生よりも高く、初任給は21〜25万円程度が平均です。手取りは18〜20万円前後となるケースが多く、夜勤の有無や処遇改善加算の支給額によって変動します。
特定技能は「労働者」としての在留資格であるため、雇用契約が明確で、比較的安定した賃金体系が整っていることが特徴です。
介護(介護福祉士)
国家資格である「介護福祉士」の資格を取得して「介護」の在留資格を持つ場合、月給は25万円以上になるケースも少なくありません。特に夜勤手当や各種加算が支給される場合、日本人介護士と同等、あるいはそれ以上の給与を得ることも可能です。
また、正社員として登用されるかどうかでも待遇は変わります。技能実習生の多くは契約社員扱いとなり、賞与の対象外となる場合があります。一方、特定技能や介護福祉士として採用された外国人介護士には、ボーナスや昇給制度が適用されることも増えており、こうした差異も考慮した設計が求められます。
EPA(経済連携協定)
EPA(経済連携協定)に基づいて来日した外国人介護士候補者の場合、来日前の語学研修費用や渡航費の一部が政府によって支援される仕組みがあります。実務者研修を経て介護福祉士国家試験に合格すれば、他の資格者と同等の給与が支払われることが多く、月給の相場は24〜28万円程度とされています。
夜勤・残業・手当を含めたモデル給与例
介護士の給与は基本給だけでなく、各種手当を含めた構成で大きく変動します。特に夜勤手当や処遇改善加算、残業代、通勤手当といった要素は、月々の収入を左右する重要なポイントです。
たとえば、特定技能の在留資格を持つ外国人介護士が、月4回の夜勤と月10時間程度の残業をこなした場合、夜勤手当で約2万円、残業代で約1万円、さらに処遇改善加算として1.5万円が支給されることがあります。これらを合算すると、基本給20万円に加え、総支給額が23〜24万円程度になるケースもあります。
ただし、手当の支給条件や金額は施設によって異なり、処遇改善加算も職場の取り組み状況や加算区分によって金額に差が出ます。そのため、求職者にとっては給与の「内訳」が明確であることが非常に重要です。
求人票や面接時には、どのような項目が給与に含まれているのかを丁寧に説明することで、入職前の期待値と実際の支給額とのギャップを防ぎ、ミスマッチを避けることができます。曖昧な説明が誤解や不信感につながり、早期離職の要因にもなるため、情報の透明性が信頼関係を築く鍵となります。
地域差・施設形態による給与の違い
外国人介護士の給与は、勤務地や施設の種類によっても変動します。たとえば、東京などの都市部では物価や生活コストが高いため、それを補う形で給与水準もやや高くなっており、特定技能の介護士であれば月給21〜25万円程度が一般的です。
一方、地方都市では月収20万円前後が相場となっており、家賃補助などを除けば手取り額に差が出ることもあります。また、施設形態による違いも見逃せません。特別養護老人ホームでは公的支援がある反面、人件費に制限があるため18〜20万円程度の支給が多い傾向にあります。
対照的に、民間の介護付き有料老人ホームやリゾート型介護施設では、利用料が高く設定されている分、給与も高めに設定されるケースが見られ、25万円を超えることもあります。さらに、小規模の施設では、他施設との差別化を図るために、あえて高待遇の給与条件を提示するケースもあります。
なお、条件提示の際には、その理由や求められる業務内容についても明確に伝えることが重要です。これにより、求職者が納得したうえで入職でき、採用後のミスマッチや早期離職のリスクを減らすことができます。
日本人介護士との賃金格差に関する注意点
外国人介護士と日本人介護士の間に給与格差がある場合、職場に不公平感が生じやすくなります。特に、同じ業務内容を担当しているにもかかわらず、賃金に明確な差があると、外国人介護士にとっては不信感や不満につながり、離職リスクを高める要因となります。
一方で、日本人介護士からも「なぜ外国人介護士だけが高待遇なのか」といった疑問の声が上がることがあります。たとえば、処遇改善加算を活用して外国人材に特別手当を支給している場合や、採用を優先的に進める中で待遇面が手厚くなると、日本人側が相対的に評価されていないと感じ、不満を抱くことがあります。
こうした意識のズレは、現場の人間関係やチームワークに悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。たとえば、職歴の違い、日本語能力の有無、資格の有無といった合理的な要素によって賃金に差が生じている場合、それを明確に伝えることで職場内の理解を得やすくなります。
雇用契約書や労働条件通知書にその旨を明記し、面接や入職時に説明責任を果たすことが、信頼関係の構築と長期的な定着につながります。
外国人介護士の給与設計における法的注意点
外国人介護士を採用するにあたっては、適切な給与設計を行うだけでなく、日本の労働関連法規を正しく理解し、遵守することが必要不可欠です。特に、外国人であることを理由に特別な取り扱いをして良いと誤解されているケースが少なくなく、結果として法令違反に繋がる事例も見受けられます。
労働基準法や最低賃金法、さらには各在留資格に基づく賃金要件など、守るべきルールは日本人を雇用する場合と基本的には同様です。加えて、社会保険や税金などの控除に関する説明責任も重く、日本語に不慣れな外国人に対して丁寧に対応することが、信頼構築と長期定着の第一歩となります。
労働基準法・最低賃金法の基本理解
外国人介護士であっても、日本国内で働くすべての労働者と同様に、労働基準法および最低賃金法の対象となります。これには、最低賃金の遵守、法定労働時間を超える労働への割増賃金の支払い、深夜や休日勤務への手当支給など、基本的な労働条件がすべて含まれます。
こうした法令を軽視した給与設計を行った場合、労働基準監督署による調査や是正勧告の対象となるだけでなく、最悪の場合には罰金など刑事責任が問われることもあります。たとえ制度を知らなかったことによるミスであっても、違反は違反として扱われるため、事前に専門家の確認を受ける、あるいは制度を十分に学ぶことが不可欠です。
また、労働条件通知書や給与明細などの書面を外国人に交付する際も、理解度に応じた説明を加えることで、トラブルの未然防止につながります。
在留資格別に求められる「同等以上の賃金」原則
外国人介護士の雇用において特に注意が必要なのが、在留資格ごとに設定されている「報酬の同等性」に関するルールです。
技能実習制度では、「同種の業務に従事する日本人と同等以上の報酬」が義務づけられており、これに違反すると技能実習の認可自体が取り消されるリスクがあります。
特定技能制度においても、「報酬が日本人と同等であること」が申請要件となっており、出入国在留管理庁や労働局による厳格な審査の対象です。そのため、外国人介護士の給与を安く抑えるような設計は、法的にも制度的にも認められません。
仮に差がある場合は、職歴や資格、日本語能力などに基づいた合理的な説明が求められ、必要に応じて資料で裏付ける体制が必要です。給与の合理性を証明する書類を整備し、定期的に見直すことで、制度違反を未然に防ぐことが可能になります。
社会保険・税金・年金など控除項目の整理
日本人と同様に、外国人介護士も雇用保険、健康保険、厚生年金などの社会保険制度への加入が義務づけられています。また、給与からは所得税や住民税も控除されるため、総支給額と手取り額の差が生じます。
日本人であればこうした制度の仕組みに一定の理解がありますが、外国人材にとっては、控除項目そのものが馴染みのないものであることが多く、「なぜ支給額よりも手取りが大幅に少ないのか」と不信感を抱く原因にもなりかねません。そのため、雇用開始時に控除項目について丁寧に説明することが極めて重要です。
給与明細を母国語に翻訳したり、通訳を同席させた説明会を設けたりすることで、外国人介護士の理解を深める工夫が求められます。また、年金や保険の加入に関する制度上のメリットも併せて説明することで、納得感のある就業が促進され、長期定着につながります。
外国人介護士の定着率と給与の関係
外国人介護士の採用では、職場環境や給与設計など多方面にわたる配慮が求められます。これらのポイントを押さえることで、定着率の向上につなげることが可能です。
ここでは、それぞれの重要なポイントについて解説します。給与だけでなく「生活の質」全体に目を向けた設計がなされていれば、外国人介護士は安心して日本での生活を続けることができ、結果的に職場への定着率も高まっていきます。
給与だけでない職場定着のポイントの考え方
たとえ給与が高水準であっても、働く環境にストレスや不安を感じてしまえば、外国人介護士が長く職場に留まることは難しくなります。実際、給与条件に惹かれて就職したものの、数ヶ月で辞めてしまう事例は少なくありません。
その背景には、日本語でのコミュニケーションがうまく取れないことや、相談相手がいないこと、文化的な違いへの理解不足といった「環境の居づらさ」があります。たとえば、上司が文化の違いを理解していなかったり、休暇や宗教的配慮に欠ける対応をされたりした場合、職場に対する信頼感が失われてしまう可能性もあります。
そのため、外国人介護士が安心して働き続けられるよう、日本語支援や通訳体制、定期的な面談の実施、生活サポート窓口の設置などが重要です。こうした環境が整っていれば、給与の多少にかかわらず、「この職場で長く働きたい」と思える土台が育まれます。
離職リスクを下げる適正な給与水準の考え方
職場環境の整備は、外国人介護士の定着に欠かせない要素です。日本語サポートや文化理解が不十分では、どれだけ給与が高くても長く働くのは難しくなります。
とはいえ、給与が低すぎる場合も、離職の大きな要因となります。生活が立ち行かない環境では、どれほど働きやすくても長期的な定着は望めません。
給与が低すぎれば、当然ながら他の施設への転職や、母国への帰国を選択する動機となります。特に、仕送りを必要とする外国人介護士にとっては、生活費を差し引いた後の手取り額が非常に重要であり、「これでは暮らしていけない」と感じた瞬間に離職を決断するケースも珍しくありません。
一方で、給与を高く設定しすぎると、今度は日本人職員との賃金バランスが崩れ、不公平感を生む可能性があります。その結果、チーム内の不満や不和が生まれ、職場全体の雰囲気が悪化することもあります。
このような事態を防ぐには、初任給は地域や施設規模に応じた適正水準とし、業務内容やスキル習得に応じて昇給していく「段階的な給与制度」を導入することが望ましいといえます。また、昇給基準や賞与支給のタイミングを明確にしておくことで、給与面における将来の安心感を持ってもらうことができます。
さらに、仕送りや家族の呼び寄せなど、介護士自身の人生設計を尊重した給与設計が行われていれば、施設への信頼感や忠誠心が生まれ、離職の抑止にもつながります。
生活コスト・仕送りの実情も踏まえた設計の考え方
都市部で働く外国人介護士にとって、最も切実な課題の一つが「生活費の高さ」です。特に東京都心部などでは、ワンルームでも家賃が月7〜8万円を超えることがあり、手取り15万円程度では家賃・食費・交通費を差し引いた後にほとんど残らないという声も少なくありません。
このような経済状況では、貯金や仕送りどころか、生活自体が不安定になり、精神的ストレスや将来不安につながります。そうした背景を踏まえると、単に総支給額を提示するだけでなく、「実質的にどれだけ生活に回せるか」という視点が給与設計に必要になります。
具体的には、住宅手当や通勤補助、食事補助などの福利厚生を充実させることが効果的です。たとえば、月2万円の住宅補助があるだけでも、実質的な可処分所得は大きく改善され、生活の安定が図れます。また、母国語でのサポートや生活相談があることも、精神的な安心感につながり、職場への信頼を深める要素となります。
外国人介護士の給与設計に役立つポイント
外国人介護士の採用と定着には、給与条件のわかりやすさと、納得感のある評価制度が欠かせません。初任給の水準だけでなく、どのような努力が昇給につながるのか、賞与がどのように決まるのかといった情報を明確に提示することで、安心して働ける環境を整えることができます。
また、評価制度や給与交渉の進め方についても、日本人と外国人とで文化的背景や理解度が異なるため、説明の仕方や制度設計にも工夫が求められます。ここでは、昇給・賞与制度の設計や、公平な評価方法、文化的配慮を踏まえた給与交渉のポイントについて詳しく解説します。
昇給・賞与制度の設計と評価の透明性
昇給制度は、勤務年数や資格取得、日本語能力の向上などに応じて段階的に設定することが理想的です。たとえば、「1年ごとに0.5~1万円の昇給」「日本語能力試験(JLPT)N3からN2への合格で+2万円」など、具体的な数値を明示することで、本人の成長が給与に反映されている実感につながります。
また、賞与についても、処遇改善加算を含む配分ルールを文書化し、「貢献度」「勤続年数」「スキル評価」などの基準を明確にすることが大切です。どのように頑張れば待遇が上がるのかが可視化されていれば、仕事へのモチベーションを保ちやすくなります。
加えて、評価の公平性と一貫性が保たれるよう、人事部門や現場責任者が共通の基準で運用する体制づくりも必要です。
外国人介護士の納得感を高める評価制度
評価制度を効果的に運用するには、できる限り数値で表せる客観的な指標を活用することが望ましいといえます。たとえば、「介護記録の記入率」「利用者とのコミュニケーションの頻度」「定められた業務の習熟度」など、日々の業務の中で測定可能な項目をもとに、月次でフィードバックを行う方法があります。
また、日本語能力や接遇面での進歩についても、N4→N3、N3→N2といったステップに応じて評価項目を設定し、それに基づく昇給や表彰制度を導入することで、努力が形として報われる環境を整えることが可能です。
外国人介護士本人にとっても、自分の成長や貢献が正当に評価されているという実感は、長期的な定着を促す要因となります。
給与交渉の進め方と文化的配慮の必要性
外国人介護士の中には、母国とは異なる文化や習慣のなかで、日本式の給与交渉に不安や戸惑いを感じる人も少なくありません。特に、「自分から給与の話をするのは失礼ではないか」と考える文化圏出身の方も多いため、採用時には施設側から積極的に条件を明示し、不明点を丁寧に説明する姿勢が重要です。
通訳を介した説明会の実施や、給与に関する相談窓口の整備など、情報を正確に伝えるための工夫も求められます。条件面に関する誤解を防ぐだけでなく、施設側の透明性ある姿勢は、信頼関係の構築にもつながります。文化的背景を理解した上での説明や対応があれば、入職後のギャップやトラブルを減らすことができ、結果として職場の安定にも寄与します。
外国人介護士に関するよくある誤解と給与設計の失敗例
外国人介護士の受け入れは、人手不足に悩む介護現場にとって有効な手段ですが、制度や人材への理解不足からトラブルに発展する例もあります。ここでは、こうした誤解や失敗例を整理し、注意すべきポイントについて解説します。
「安価な労働力」という誤解が招くリスク
「外国人は日本人よりも安く雇える」という認識は、現実とは大きく異なります。このような誤解のもとで給与を必要以上に低く設定した場合、そもそも求人に応募が集まらなかったり、採用後も短期間で離職されてしまったりするなど、安定的な人材確保にはつながりません。
また、技能実習や特定技能などの制度では、「同等以上の賃金」を支払うことが法的に求められており、報酬の抑制は制度違反になるリスクがあります。加えて、過度に低い待遇が明るみに出た場合、労働局の指導や報道機関による取材を受け、施設名が公表されるなど、社会的信用の低下や風評被害に発展する恐れもあります。
実際に、SNSやメディアを通じて「外国人を安く使っている」といった批判が広がった事例もあり、イメージダウンによる採用難に直結する可能性があります。したがって、外国人を「コスト削減の手段」としてではなく、日本人と同様に尊重される労働力として適正な条件で迎える姿勢が不可欠です。
同一労働・同一賃金の考え方が必要な理由
同じ業務をこなしているにもかかわらず、外国人介護士の給与が日本人よりも明らかに低い場合、社内に強い不公平感が生まれやすくなります。特に、夜勤や身体介助など負担の大きい業務を担当しているにもかかわらず、賃金に差があると、外国人本人だけでなく日本人職員からも不満の声が上がることがあります。
また、業務範囲の拡大や昇進のタイミングにおいて、給与がそれに見合って上がっていないと、「頑張っても報われない」と感じさせてしまい、モチベーションの低下や離職の原因となりかねません。
こうした状況を防ぐには、「業務内容に応じた給与設定」や「昇給・賞与ルールの明文化」が重要です。外国人と日本人が互いに納得できる透明性の高い報酬体系を整えることで、職場全体の信頼関係が保たれ、働きやすい環境づくりにつながります。
給与条件の曖昧さがもたらす信用問題
給与に関する条件が曖昧なまま採用を進めてしまうと、後に大きなトラブルを招く原因になります。たとえば、雇用契約書に書かれている内容と実際の支給額が異なっていたり、控除の内容が事前に説明されていなかったりした場合、「だまされた」と感じさせてしまうリスクがあります。
特に言語や文化の違いがある外国人介護士に対しては、日本語だけで説明するのではなく、母国語での契約書の用意や、通訳を交えた説明の機会を設けるといった配慮が求められます。こうした対応によって、条件の誤解やすれ違いを未然に防ぎ、雇用主としての信頼感を高めることができます。
また、給与明細の見方や控除項目の意味なども丁寧に伝えることで、「想定よりも手取りが少ない」といった不満を軽減できます。信頼を得るためには、支給額の大小だけでなく、内容を分かりやすく説明する姿勢や、誠実に対応する姿勢も信頼を築くうえで欠かせません。
外国人労働者の採用なら「外国人材採用ラボ」をご活用ください
介護業界で外国人材を採用・定着させるには、単に人を紹介してもらうだけでは不十分です。在留資格や労働条件の整備、日本語サポート、トラブル防止の仕組みまで含めた「包括的な支援」が必要になります。
株式会社クレイプラスが提供する「外国人材採用ラボ」では、採用前の制度設計から、採用後の定着支援まで一気通貫でサポートします。現場の負担を最小限にしながら、外国人介護士が安心して長く働ける環境づくりをお手伝いします。
最後に、「外国人材採用ラボ」の概要と、提供するサービスを紹介します。
外国人材採用ラボとは
「外国人材採用ラボ」は、株式会社クレイプラスが運営する外国人材紹介サービスです。単なる紹介にとどまらず、採用前後のトラブルを未然に防ぐ丁寧な支援と、高品質な人材マッチングを実現しています。
人材会社として中小企業の人手不足解消にむきあい続けた歴史を持つ
私たちは「企業のDNAや価値観に合う人材」を紹介することを信条に、単なるマッチングではない本質的な採用支援を行ってきました。建設、介護、製造業など、業種ごとのニーズや現場を理解し、適切な対応が可能です。
マーケティングの力により、幅広く人材を探し出す
常に人材の質を追求するスタンスのもと、安定的な応募ルートを確保しながらも、状況に応じて柔軟に集客手法を変化させています。その結果、多様で優秀な候補者層の確保に成功しています。
一人ひとりと丁寧に面談を実施している
喫煙習慣、宗教上の制約、食生活の好み、集団生活の適応など、現場で起きがちなトラブル要因を事前にクリアリングしています。応募者一人ひとりと複数回の面談を重ね、企業とのすれ違いを極力排除したご紹介を行っています。
採用から定着まで一貫したサポート
在留資格取得や受け入れ準備、生活支援、通訳支援、相談対応など、外国人材が安心して働ける職場づくりまで伴走支援いたします。貴社が外国人材の雇用に不慣れな場合でも、必要な準備をゼロからご案内可能です。
外国人材の紹介サービス
外国人材採用ラボでは、特定技能の在留資格に必要な要件を満たした、即戦力となる外国人材を紹介しています。特定技能外国人材紹介の概要は次のとおりです。
項目 | 内容 |
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紹介人材の要件 | ・各分野で定められた「技能試験」に合格している ・日本語能力試験(JLPT)N4相当以上を取得している ・専門知識や実務スキルを保有している |
期待できる効果 | ・即戦力としての活躍が期待できる ・採用後の教育コストや時間を削減できる |
対応分野 | ・介護、建設、製造業、外食業など、人手不足が深刻化している多くの産業分野に対応できる |
企業の皆様が求めるスキル、経験、日本語レベルなどを丁寧にお伺いし、最適な特定技能外国人材をご提案します。
義務的支援代行サービス
特定技能外国人を雇用した企業には、法律で定められた10項目の「義務的支援」を行う責任があります。外国人材採用ラボでは、専門知識が必要な支援業務をすべて代行する「一括支援」サービスを提供し、企業の負担を大幅に軽減します。主な支援内容は、次のとおりです。
- 生活基盤をサポートする:住居の確保、銀行口座の開設、携帯電話の契約などを支援する。
- 各種手続きに同行する:役所での手続きや、その他必要な公的手続きに同行する。
- 定期的にコミュニケーションをとる:定期的な面談を実施し、仕事や生活の悩みを丁寧にヒアリングする。
複雑で時間のかかる支援業務を専門家に任せることで、企業の担当者は本来のコア業務に集中できます。その結果、法令を遵守しながら、安心して外国人材を受け入れる体制を構築できるでしょう。
まとめ
外国人介護士の採用は、少子高齢化が進む日本の介護現場において、慢性的な人手不足を解消するための有効な選択肢となっています。しかし、採用した外国人介護士が現場で長く活躍し、戦力として定着するには、給与設計をはじめとした総合的な取り組みが不可欠です。
給与水準や昇給の見通しは、求職者が職場を選ぶ際に非常に重要なポイントであり、これを適切に示すことで応募意欲を高め、定着率の向上につなげることができます。また、在留資格ごとに異なる報酬の要件や、日本の労働基準法、最低賃金法といった関連法規を正確に理解した上で、法令遵守しながら納得感のある評価制度を組み込んだ給与設計を行うことが求められます。
こうした仕組みづくりが実現できれば、外国人介護士が安心して働き続けられる職場環境の構築につながり、職員の定着率を高める効果が期待できます。
加えて、採用から定着までのあらゆる課題を一括でサポートする「外国人材採用ラボ」のような専門サービスを積極的に活用することが、効率的かつ確実に成果を上げるための非常に有効な方法です。外国人介護士の採用にお困りの場合には、「外国人材採用ラボ」までお気軽にお問い合わせください。