
特定技能の外国人材を雇用している企業の中には、「やむを得ず解雇する場合、どんな手続きや注意点があるのかわからない」「日本人と同じように解雇しても問題ない?」といった不安や疑問を抱えている担当者も少なくありません。
特定技能外国人の解雇には、在留資格や入管手続きと密接に関わる独自の注意点があり、通常の労務管理以上に慎重な対応が求められます。日本人と同様の労働法規が適用される一方で、在留資格の変更・維持といった出入国管理上の要件が加わるため、制度を正しく理解していないと、思わぬトラブルやリスクにつながることもあります。
そこで今回は、特定技能の外国人材を解雇する際に企業が押さえるべき法的ポイントや、解雇通知・退職手続き・入管への届出といった実務対応の流れをわかりやすく解説します。不適切な対応によるトラブルや行政指導を防ぐためにも、企業として知っておくべき基本的な知識を整理し、実践的なアドバイスとともに紹介します。
外国人材にとっても企業にとっても、円満かつ適切な離職対応を行うことが、今後の信頼関係の構築にもつながります。ぜひ最後までご覧ください。
目次
特定技能外国人が離職する2つのケース
特定技能外国人が「離職」する場面は、大きく分けて2つのケースがあります。一つは、本人の意思によって自主的に退職する「自己都合退職」、もう一つは会社側の都合による「解雇(会社都合退職)」です。それぞれのケースによって、企業側に求められる手続きや支援の内容が大きく異なります。
特定技能制度は、単に雇用契約の締結・終了だけではなく、在留資格や制度上の届出義務、支援責任といった複雑な義務が課されており、その違いを理解しておかないと、制度違反として行政指導や不利益処分を受ける可能性もあります。ここでは、自己都合退職と解雇(会社都合退職)の違いと、それぞれの特徴について解説します。
自己都合退職
外国人本人の意思で退職する「自己都合退職」は、企業からの働きかけによるものではなく、個人的な事情やキャリアの方向性などに基づくものです。たとえば、次のような理由が典型的です。
- 母国の事情により帰国したい
- 別の地域で働きたい
- 家庭の事情がある
この場合でも、企業側には一定の責任と義務があります。たとえば、出入国在留管理庁への「契約終了に関する届出」の提出や、本人への情報提供など、制度上求められる対応を適切に行う必要があります。
また、自己都合であっても、転職希望がある場合には、可能な限り情報提供などの支援を行うことが望ましいとされています。さらに、退職の意思を確認する際には、言語の壁や文化的な誤解が起きないよう、通訳や簡易な日本語を使った確認を徹底し、誤解が生じないよう文書で記録を残すことが重要です。
解雇(会社都合退職)
企業の都合による特定技能外国人の解雇には、慎重な対応が求められます。外国人材であっても日本の労働法が適用されるため、法的な要件を正確に理解することが必要です。
特定技能1号では、在留期間の上限(通算5年)に連動して多くが有期雇用契約となります。有期雇用契約中の解雇は、労働基準法により「やむを得ない事由」がなければ認められず、無期契約よりも厳しい条件が課されます。
一方、特定技能2号は在留期間に上限がなく、無期雇用も可能ですが、実務では有期契約から始まるケースもあります。この場合、有期契約を繰り返していた場合には、「雇止め」ではないかということで、解雇の合理性を問われる可能性もあります。
雇用形態に応じた判断が重要で、有期契約なら「やむを得ない事由」、無期契約なら「客観的合理性と社会通念上の相当性」が必要となります。これらを混同せず、契約内容に沿った正確な判断が求められます。たとえば、重大な規律違反、長期の無断欠勤などが該当する場合でも、記録に基づく証明が不可欠です。
また、妊娠・出産・国籍・信条などを理由とする解雇は、法令で明確に禁止されています。解雇にあたっては、就業規則や契約内容に沿った手続きを行い、外国人材本人にもわかりやすい言葉で説明するなど、誠実な対応が求められます。
企業が行うべき対応:自己都合退職の場合
外国人材本人が退職を申し出た場合でも、企業側にはさまざまな実務対応が求められます。単に「退職」で済ませるのではなく、制度上の手続きを正確に行い、本人の意思や状況に応じて適切な支援を講じる必要があります。ここでは、企業が取るべき主な対応について解説します。
- 退職理由と転職希望の有無を確認し記録を残す
- 退職日から14日以内に入管・機構へ届出を行う
- 本人の希望に応じた再就職先の情報提供を行う
退職理由と転職希望の有無を確認し記録を残す
まず重要なのは、本人がどのような理由で退職を希望しているのか、退職後のことをどう考えているのか、転職を希望しているかどうか等を丁寧にヒアリングすることです。これにより、後の誤解やトラブルを防ぎ、必要な支援の判断材料にもなります。
また、本人から聞き取った内容は、できる限り文書(退職届や面談記録)に残すようにしましょう。言語の壁がある場合は、やさしい日本語や通訳を活用し、本人の理解度を確保することが不可欠です。
退職日から14日以内に入管・機構へ届出を行う
自己都合退職であっても、企業には「契約終了届」の提出義務があります。これは、出入国在留管理庁に対して、14日以内に「契約終了に関する届出」を行う必要があるという制度上の要件です。
怠った場合、受入れ機関としての信頼性を損ない、将来的な受入れ制限など行政指導の対象となる可能性があります。特に複数名を受け入れている企業では、1件の手続き漏れが全体の管理体制に影響を与えることにもつながるため、厳重な管理が求められます。
なお、分野によっては、受入れ機関が加入している特定技能協議会にも、契約終了や転職状況について報告しておくことが実務上望ましいとされています。法的に明確な届出義務はないものの、協議会の支援や調整機能を活用するためにも、状況共有は推奨されます。
本人の希望に応じた再就職先の情報提供を行う
制度上、特定技能外国人は分野内での転職が認められています。そのため、本人が就労継続を希望する場合には、再就職先の情報提供や紹介など、可能な範囲での支援を行うことが望まれます。
たとえば、ハローワークへの案内、求人情報の提供、支援機関や支援団体との連携などが有効です。登録支援機関がある場合は、同機関との連携も重要です。
企業が行うべき対応:解雇(会社都合退職)の場合
企業都合による解雇の場合、労働法上・入管制度上の両面で、厳格かつ丁寧な対応が求められます。対応を誤れば、不当解雇として訴訟リスクを招くばかりでなく、企業の評判や制度運用にも大きな影響を与えることになります。ここでは、法的に正当な解雇として認められる条件や実務対応を整理します。
- 就業規則・契約内容の確認と本人への説明を行う
- 支援計画に沿って、解雇後も支援を継続する
- 入管への契約終了届など届出義務を期限内に履行する
就業規則・契約内容の確認と本人への説明を行う
解雇を実施する前に、まず就業規則や雇用契約書に記載された解雇事由や手続き内容を確認します。規則に沿っていない解雇は無効とされる可能性があるため、事前のチェックは欠かせません。
また、解雇に至るまでの経緯や理由について、外国人材本人に対して丁寧かつわかりやすい説明を行うことが求められます。説明の際は、通訳の配置や資料の翻訳も検討し、本人が納得した上で、理解できるよう配慮しましょう。
支援計画に沿って、解雇後も支援を継続する
特定技能1号の受入れ機関には、解雇後も一定期間、生活や就職に関する支援を継続する義務があります。これはあらかじめ定めた「支援計画書」に基づいて実施されるもので、支援の内容には、生活上の悩みや困りごとに対応するための相談業務、本人の希望に応じた就職先の情報提供、さらに必要に応じてハローワークなどの公的機関に同行・紹介する支援などが含まれます。
特に、突然の解雇となった場合には、本人の生活不安を最小限に抑えるためにも、丁寧かつ実践的なフォローが重要となります。
入管への契約終了届など届出義務を期限内に履行する
「自己都合退職」の場合と同じように解雇が決まったら、14日以内に入管に対して「契約終了届」を提出する必要があります。これは制度上の義務であり、違反すると企業へのペナルティが課せられる可能性もあります。
併せて、支援内容や本人とのやり取りを記録として残しておくことで、後のトラブル防止や証拠保全にも役立ちます。
見落としがちな「制度上の解雇」に該当するケース
特定技能制度では、明示的に「解雇」とされていなくても、制度運用上「契約終了」とみなされるケースがあります。このような事例を放置すると、企業も本人も予期しないリスクに直面する恐れがあります。ここでは、特に注意すべき見落とされがちな制度上の「解雇扱い」リスクについて解説します。
企業の合併・分割・法人化時の届出を怠った場合
企業が合併や分割、法人化などによって法人格が変更された場合、雇用主も変更されたとみなされます。その場合、雇用契約が一度終了したものとされ、改めて新たな契約手続きが必要です。
この手続きを怠ると、形式上「契約終了」と判断され、在留資格にも影響が出る可能性があります。法務省への事前届出や、新たな契約書の作成など、抜け漏れのない対応が求められます。
就労条件の変更が在留資格の許可内容とずれる場合
在留資格は、「特定の活動内容・職種」に基づいて許可されているため、大幅な業務変更や配置転換があると、その範囲外と判断される可能性があります。たとえば、製造分野で許可されていた外国人材を、現場管理や事務職に異動させるといったケースが該当します。
このような変更は「就労実態の不一致」と見なされ、結果として在留資格の取り消しや契約終了とされるおそれがあります。企業は、配置変更を行う前に、必ず在留資格との整合性を確認する必要があります。
特定技能外国人の退職・解雇後の在留資格維持と支援対応
外国人材が退職・解雇後も合法的に日本に滞在し、次の就労先を探すためには、在留資格の維持や変更などの対応が必要となります。企業としても、本人が不法滞在者とならないよう、制度に関する情報提供や支援を行うことが重要です。ここでは、特定技能外国人の退職・解雇後にとるべき在留資格維持の対応について解説します。
不法滞在を防ぐため、在留資格変更や猶予申請を支援する
離職後すぐに新たな雇用先が決まらない場合でも、出入国在留管理庁に申請を行うことで、短期滞在への変更や出国準備期間としての在留が許可されることがあります。これらの措置は入管の裁量によるもので、本人が自ら手続きを行う必要がありますが、制度を知らない外国人材も多いため、企業として丁寧な情報提供や専門家の紹介などの支援が望まれます。
特定技能のまま転職できる業種・手続き情報を提供する
2025年8月現在、特定技能の在留資格は16分野に限定されているため、対象外の業種に転職しようとすると在留資格の再取得が必要になります。そのため、外国人材本人に対しては、どの業種で転職可能なのか、必要な手続きは何かを明確に伝える必要があります。
場合によっては、評価試験の再受験や雇用契約の事前提示が求められることもあるため、実務に通じた情報提供が不可欠です。
特定技能外国人の解雇時の対応に外国人材採用ラボの実務サポートをご活用ください
制度理解が不十分なままの対応は、企業・外国人双方にとって大きなリスクとなりえます。特定技能制度には、在留資格の更新や契約終了時の支援義務など、通常の雇用管理とは異なる特有の要件が存在します。こうした複雑な制度を正しく理解し、適切に運用するためには、専門家のサポートを受けることが不可欠です。
そのような場面で力を発揮するのが、「外国人材採用ラボ」です。実務経験が豊富な担当者が、解雇・退職に関連する手続きはもちろん、採用から定着支援まで幅広く支援し、企業の制度運用をトータルでサポートします。最後に、外国人材採用ラボの概要と、提供するサービスを紹介します。
外国人材採用ラボとは
外国人材採用ラボは、株式会社クレイプラスが運営する、特定技能をはじめとした外国人材の紹介・支援に特化したサービスです。人材を紹介するだけでなく、企業の文化やニーズに合致し、長期的に活躍できる人材とのマッチングを重視しています。
長年培ってきた人材紹介のノウハウと独自のマーケティング力、丁寧な面談を通じて、企業と外国人材双方にとって最良の出会いを創出することを目指しています。
人材会社として企業の人手不足解消にむきあい続けた歴史を持つ
外国人材採用ラボの運営母体である株式会社クレイプラスは、長年にわたり企業が直面する深刻な人手不足の解決に取り組んできました。労働力を補充するだけでなく、企業文化に適した、長期的に活躍できる人材の採用を重視しています。
全業種対応の人材紹介事業(HR事業)も展開しており、各企業の状況や求める人物像を深く理解し、最適な人材を提案できる点が強みです。
マーケティングの力により、幅広く人材を探し出す
外国人材採用ラボは、独自の採用ルートとマーケティング戦略を駆使し、国内外から優秀な特定技能の候補者情報を幅広く収集しています。特定の国や地域に偏ることなく、多様なスキルや経験を持つ人材を確保し、企業の細かな要望や専門的なニーズにも対応可能です。
常に最新の市場動向を把握し、より質の高い人材を獲得するための新たな採用ルートの開拓にも力を入れています。
一人ひとりと丁寧に面談を実施している
外国人材採用ラボでは、候補者一人ひとりとじっくり向き合う面談を重視しています。たとえば、書類選考だけではわからないスキルや経験、仕事に対する価値観、日本で働きたいという熱意などを理解するよう努めています。
また、外国人材と複数回の面談を実施しているため、外国人材と受け入れ企業双方の、「こんなはずではなかった」というミスマッチを最小限に抑えられるのも、私たちの強みです。
外国人材の一括支援サービス
外国人材採用ラボでは、特定技能外国人の受け入れに伴う手続きや法律で定められた支援義務をまとめて代行する「一括支援サービス」も提供しています。
在留資格関連の申請書類作成から、住居の確保、入国時の空港送迎、生活オリエンテーションの実施といった多岐にわたる業務をワンストップでサポートいたします。その結果、企業の担当者は複雑な事務作業や支援業務から解放され、外国人材の受け入れ準備や現場での指導など、コア業務に専念できるでしょう。
まとめ
特定技能制度における解雇の法的要件や注意点、制度上「契約終了」と見なされる場面、さらには本人の在留資格維持と転職支援に至るまで、実務に直結する対応ポイントを解説しました。特定技能外国人が退職・解雇する際は、「自己都合退職」と「会社都合による解雇」とで企業側の対応が大きく異なります。
これらの理解を深め、適切に対応することで、企業にとってのトラブルを未然に防ぐだけでなく、外国人材にとっても安心して働ける環境づくりが可能になります。とはいえ、実際の対応に不安がある、あるいは支援体制を整える余力がないという企業様も少なくありません。そのような場合には、特定技能制度に精通した専門家による支援を受けることが有効です。
外国人材の採用から退職後のサポートまで一貫してサポートを行う「外国人材採用ラボ」では、企業の実情に合わせた柔軟な提案と、制度に即した実務支援を提供しています。制度運用に確実性を持たせ、外国人材と企業の双方にとって良好な関係を築くためにも、ぜひ一度「外国人材採用ラボ」へお問い合わせください。