
介護分野で特定技能の外国人材を受け入れようと考えている企業担当者の中には、「特定技能協議会には必ず加入しなければならない?」「どのタイミングで加入すれば良い?」「加入しないとどんなリスクがある?」といった疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
介護分野においては、受入れ機関(受入れ企業)には特定技能協議会への加入義務があり、加入時期や手続きにも明確なルールが定められています。
そこで今回では、特定技能協議会の制度概要から、介護分野における加入のタイミング、手続きの流れ、注意点、そして加入しない場合のリスクまで、実務に即してわかりやすく解説します。制度対応をスムーズに進め、外国人材の受け入れを成功させるための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。
目次
介護業界の現状と特定技能制度の役割
介護分野における人手不足は深刻化しており、政府は「特定技能制度」を活用して外国人材の受け入れを推進しています。ここでは、制度創設の背景や介護分野の位置づけについて解説し、企業が制度を正しく理解できるように基礎情報を整理します。
介護業界では人材不足が加速している
日本は急速な高齢化社会を迎えており、介護を必要とする高齢者人口が年々増加しています。一方で、介護業界では慢性的な人手不足が深刻化しており、離職率も高く、新たな人材の確保が困難な状況です。地域差はあるものの、都市部・地方問わず介護施設や訪問介護事業所での求人が充足しないケースが続出しています。
このような背景から、国内人材だけでは介護サービスの供給が追いつかないという課題を解消すべく、外国人材の力を活用する動きが広がっています。
特定技能制度の基本概要と介護分野の位置づけ
特定技能制度は、一定の日本語能力や技能を有する外国人材を労働力として受け入れるための在留資格制度で、2019年に創設されました。特定技能制度には、「1号」と「2号」があります。
「特定技能1号」は、16分野の仕事内容があり、分野ごとに定められた試験に合格することで在留資格が認められ、日本国内で最長5年間の就労が可能となります。
介護分野も特定技能制度の対象業種の一つであり、介護技能評価試験と日本語能力試験(N4以上)に合格した外国人材が「特定技能(介護)」として日本で働くことが認められています。
特定技能外国人材が従事できる介護業務の範囲
特定技能1号の外国人材が従事できる介護業務は、厚生労働省の定める業務範囲に限定されています。主に次のような業務が該当します。
- 身体介護(入浴・排泄・食事等の直接的介助)
- 生活援助(掃除・洗濯・調理など)
- 介護記録の作成や報告
- 利用者や家族とのコミュニケーション
なお、訪問介護についても、一定の条件を満たすことで対応可能となりましたが、原則は施設介護が中心となります。
特定技能協議会の制度と介護分野における役割
特定技能協議会では、特定技能制度運用の実態把握と政策へのフィードバック、現場の課題への対応を組織的に行う体制が整備されています。ここでは、特定技能協議会がどのような目的で設置され、介護分野においてどのような機能を果たしているのか、制度的観点から解説します。
特定技能協議会制度とは
特定技能協議会は、外国人材の円滑な受け入れと職場・地域への定着を支援するため、特定技能分野ごとに設置された官民連携の団体です。制度の適正な運用を図るため、協議会は受け入れ現場の課題やニーズを把握し、行政との橋渡し役を担うとともに、制度改善の提言や支援体制の構築に取り組んでいます。
業務の特性上、特に介護分野では、外国人材に対して文化や言語面での支援が不可欠であることから、厚生労働省の分野別運用方針により、協議会への加入が制度上義務づけられています。これは、外国人材が安心して就労し、現場で長期的に活躍するための環境整備を図るものです。
介護分野における協議会の構成と各団体の関わり
介護分野の特定技能協議会は、制度運用の実効性を高めるため、厚生労働省や地方自治体、介護業界の関連団体、そして外国人材を受け入れる介護施設や事業所などの企業が構成員として参画しています。
各構成員が情報を共有し、課題を持ち寄ることで、制度の継続的な改善と現場での円滑な運用が促進されています。
協議会の主な活動と企業へのサポート
特定技能協議会では、外国人材の受け入れと定着を支援するために、さまざまな活動が実施されています。
たとえば、日本語学習や生活適応に関する研修会・セミナーの開催、受け入れ現場へのヒアリングやアンケート調査を通じて、実際の課題やニーズを把握する取り組みが行われています。これらの情報は、制度の見直しや新たな支援策の検討材料として活用されます。
また、受入れ機関向けには、申請手続きの流れや必要書類、よくある質問に対応した「支援ガイドライン」や「Q&A集」が配布され、実務に役立つ情報提供がなされています。特に協議会が提供する資料は、制度の最新動向や行政からの通達を反映したものとなっており、実務担当者にとって重要な情報源となっています。
さらに、協議会では定期的に運営委員会を開催し、現場の声を集約して制度運用に関する改善提言を行政に提出する役割も担っています。こうした活動を通じて、制度の実効性向上と、現場で働く外国人材の就労環境の整備に貢献しています。
受入れ機関にとっては、こうした協議会の活動を通じて、制度運用に関する最新情報や実務対応のヒントを得ることができ、外国人材の受け入れを円滑に進めるうえで大きな支援となります。
介護分野における特定技能協議会加入の義務と注意点
介護分野の特定技能協議会加入は、他分野と異なり「義務」として制度上明示されています。ここでは、加入が義務化されている背景、加入時期のルール、未加入時のリスクについて実務目線で解説します。
介護分野で加入が義務化されている背景
介護は、人と人との関係性を基盤にした業務であり、文化や言語、価値観の違いが現場に与える影響が大きい分野です。外国人介護人材に対しては、介護技術の習得のみならず、日本での生活や職場適応の支援も不可欠です。
こうした背景から、厚生労働省は特定技能制度の運用に際し、介護分野では特定技能協議会への加入を「義務」として定めました。制度創設当初から分野別運用方針に明記されており、企業は受け入れ後の支援体制を強化する役割を担うことが期待されています。
加入時期のルールと「受入後2ヶ月以内」の意味
特定技能外国人を雇用した介護施設等の受入れ機関は、「受け入れ後2ヶ月以内に協議会へ加入すること」が義務づけられています。この「2ヶ月以内」とは、在留資格の発効日または就労開始日を起算点とし、60日以内に加入手続きを完了する必要があるという意味です。
2ヶ月を過ぎても加入していない場合、制度違反として行政からの是正指導を受ける可能性があるため、事前の準備とスケジュール管理が極めて重要です。
協議会未加入の場合に発生するリスク
特定技能協議会に加入しないまま外国人材を受け入れた場合、企業は制度上さまざまなリスクを抱えることになります。
まず、厚生労働省や出入国在留管理庁から、制度違反として是正勧告や行政指導を受ける可能性があります。これにより、企業の信頼性が損なわれるだけでなく、次回以降の在留資格の申請や更新に悪影響を及ぼすおそれがあります。
また、支援体制そのものが不十分と見なされることで、現場での対応に混乱が生じ、外国人材との信頼関係や定着支援にも支障をきたすリスクがあります。
こうしたリスクを回避するためにも、企業は制度遵守の観点にとどまらず、職場の安定運営と外国人材の安心感を確保するうえでも、特定技能協議会への適時加入が不可欠です。
特定技能協議会への加入手続きの方法・流れ
これまで説明してきたように、介護分野における特定技能協議会への加入は、就労開始後2ヶ月以内の義務として明確に定められています。ここでは、スムーズに加入手続きを行うためのステップ、提出書類、申請先の確認方法、そして企業内で整備しておくべき体制や実務上のチェックポイントを解説します。
参照元:「介護分野における特定技能協議会」手続きの流れ(厚生労働省)
加入手続きの流れ
介護分野の特定技能協議会への加入は、厚生労働省が定める所定の手続きに従って行う必要があります。加入の流れは、次のステップに沿って進められます。
- 厚生労働省ホームページから「協議会加入申請書」一式をダウンロードする:申請様式や記載要領、提出先情報がまとめられた資料が公開されています。
- 必要事項を記入し、必要書類とともに提出する:申請書には、企業情報や受け入れ外国人の基本情報、受け入れ責任者の氏名・連絡先などを記載します。
- 提出方法は、「郵送」または「オンライン申請フォーム」から送信する:介護技能評価試験センターが窓口となり、受付後に確認・登録作業が行われます。
- 登録完了後、加入証明書(通知)を受領する:証明書は、協議会加入の完了を示す書面であり、その後の申請等に必要になる場合があります。
加入手続きに必要な主な提出書類
加入手続きに必要な主な提出書類には次のものが挙げられます。
- 協議会加入申請書(様式1)
- 受け入れ責任者情報(様式2)
- 受け入れ外国人の氏名、在留カード写し 等
- 「構成員遵守事項」への同意書(様式3)
※これにより、協議会活動への協力義務と法令遵守を明確にします。
以上の手続きを速やかに行うことで、制度違反を回避し、外国人材の安定した受け入れ体制を整えることができます。書類様式や最新の提出先は、厚生労働省または介護技能評価試験センターの公式サイトで必ず確認してください。
加入に向けた社内体制整備と実務上の注意点
特定技能協議会への加入手続きを円滑に進めるには、社内での準備体制をあらかじめ整えておくことが重要です。必要な体制構築には、次のものが挙げられます。
- 対応の窓口を一本化する
- 各種書類の管理体制も整える
- 登録支援機関との業務分担を明確化する
対応の窓口を一本化する
外国人材の受け入れに関する責任者および実務担当者を明確にし、対応の窓口を一本化しておくことで、申請書類の記載や提出時の不備を防ぐことができます。
各種書類の管理体制も整える
在留資格や支援計画に関連する各種書類の管理体制も整えておく必要があります。特に、制度上の義務として支援実施の記録が求められるため、これらの文書を適切に保管・整理できる仕組みが不可欠です。
登録支援機関との業務分担を明確化する
登録支援機関と業務を分担している場合には、双方の役割や責任範囲を明確にし、日常的な連携体制を確保しておくことが望まれます。協議会から支援実施状況に関する報告要請があった場合に迅速に対応できるよう、体制を整備しておくことが求められます。
特に、複数名の外国人材を受け入れている場合や、複数の事業所・拠点で勤務するケースがある場合には、拠点ごとに責任体制を分けるなど、より実態に即した管理体制を構築することが効果的です。
特定技能協議会との関わり方
特定技能協議会は、制度への単なる「加入先」ではなく、外国人材の受け入れや定着支援を進めるうえで、企業が継続的に関わり、積極的に活用すべき制度的な枠組みです。ここでは、受入れ機関が協議会とどのように関わり、その関与をどのように実務へ活かすのかについて解説します。
協議会で求められる企業の役割を果たす
特定技能協議会に加入した企業は、単なる登録先ではなく、制度運営に関与する「構成員」としての責任を担います。現場での課題や改善提案を協議会に提供することが求められ、これは制度の見直しに直結する重要な情報となります。
また、協議会が開催する会合や研修には、制度の最新情報や支援ノウハウを共有する場として参加が期待されます。さらに、企業は活動状況や支援記録などを定期的に報告する必要があり、これは制度上の信頼性を高める要素となります。
こうした役割は一定の負担を伴いますが、制度の質向上に貢献するとともに、自社の支援体制の強化や外国人材の安定的な定着にもつながります。
制度理解と定着支援に協議会を活用する
特定技能協議会では、外国人材の受け入れに関する最新情報や現場の課題、支援の具体的な手法について、定期的に情報提供が行われています。こうした情報は、受入れ機関にとって実務面でさまざまなメリットをもたらします。
たとえば、他社の成功事例を参考にできることで、自社の取り組みに活かせる実践的なヒントが得られます。また、行政による最新の制度方針や運用変更の動向をいち早く把握できるため、制度対応を先手で進めることが可能になります。さらに、支援方法や職場環境の整備に関する具体的な事例を知ることで、自社の支援体制の見直しや改善にも役立てることができます。
特に、外国人材とのコミュニケーション方法の工夫や、定着率向上を目的とした社内研修の設計など、現場で使える知見は協議会だからこそ得られる貴重な情報資源といえるでしょう。
企業自身の姿勢が協議会活用の成果を左右する
特定技能協議会は、単に行政や上部団体からの指示を受ける場ではなく、参加企業が主体的に関わることで制度の質が高まる場でもあります。企業が自身の課題を持ち寄り、改善提案を行い、実務で培った知見を他の構成員と共有することで、制度全体の運用がより現場に即したものとなり、結果的に自社の支援体制や運用環境にも良い影響をもたらします。
こうした成果を引き出すためには、企業側の関与の姿勢が非常に重要です。協議会に対して受け身で臨むのではなく、自ら積極的に意見や現場の声を届けようとする姿勢が求められます。
また、担当者が継続的に協議会の活動に関心を持ち続けることも欠かせません。さらに、他の受入れ機関と協力・連携しながら支援ノウハウを深めていくことも、制度活用の大きな力になります。
企業自身が制度の担い手であるという自覚を持つことが、協議会を最大限に活用し、外国人材の安定雇用と定着支援を実現するための鍵となります。
特定技能制度に関する支援サポートは「外国人材採用ラボ」へご相談ください
介護分野における特定技能制度の運用は、手続きや支援体制の整備などが多岐にわたり、これまで解説したように、企業が単独で対応するには負担が大きいことが現実です。そうした不安や負担を感じたときには、専門サービスの活用が有効な選択肢となります。最後に、「外国人材採用ラボ」の概要と、具体的なサポート内容を紹介します。
「外国人材採用ラボ」とは
株式会社クレイプラスが運営している「外国人材採用ラボ」は、特定技能制度に精通した専門家チームが、中小企業を中心に外国人材の受け入れを総合的に支援するサービスです。制度運用に必要な煩雑な手続きを代行・補助し、企業の人材戦略を実現するパートナーとして、数多くの支援実績を有しています。
協議会加入を含めたトータル支援体制
外国人材採用ラボでは、特定技能外国人材の紹介やマッチングから、協議会加入手続きのサポート、支援計画書の作成代行、在留資格申請書類の準備と提出支援まで、制度運用に必要な一連の業務を包括的にサポートしています。さらに、入社後の生活支援や就労支援、長期定着に向けた支援体制も整えており、企業が直面しやすい「協議会への加入が不安」「登録支援機関との連携がうまくいかない」といった課題にも柔軟に対応可能です。
導入から定着までの実績とサポート事例
これまでにも、外国人材採用ラボは、新規採用時の支援計画策定から、面接への同席や多言語対応による採用成功率の向上、入職後の定着を促進するためのフォローアップ面談の実施、さらには職場内での異文化理解研修の企画・運営など、現場に即した具体的な支援を行ってきました。
こうしたサポートを受けることで、企業は制度対応に過度な負担をかけることなく、本来の業務に集中しながら外国人材の安定的な受け入れと定着を実現することが可能になります。
まとめ
特定技能協議会制度の概要から、加入のタイミング、手続きの流れ、企業が果たすべき役割や活用メリットまでを段階的に解説しました。
介護分野で特定技能の外国人材を受け入れる場合、協議会への加入は制度上の義務であり、適切な手続きと実務対応が欠かせません。協議会は単なる加入先ではなく、制度を正しく理解し、現場での受け入れと定着を成功させるための重要なパートナーです。
「制度対応が不安」「どこから着手すれば良いかわからない」と感じるご担当者様もいらっしゃるかもしれません。そんなときは、特定技能制度に精通した支援サポートができる「外国人材採用ラボ」をぜひご活用ください。協議会加入の手続きはもちろん、在留資格申請から定着支援まで、貴社の実務を一貫してサポートいたします。
少しでもご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。