公開日: 2025.06.02
【2025】特定技能の「労働時間」に関するルールは?企業が把握しておくべき項目を解説
特定技能の「労働時間」に関するルールは?企業が把握しておくべき項目を解説

「特定技能で外国人材を雇用する場合、日本人と同じ労働時間で働かせても良い?」「残業やシフト勤務にも対応できるのか不安」そんな疑問をお持ちの企業の採用担当者の方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、特定技能の在留資格を持つ外国人材は、日本人労働者と同等の条件で就労することが認められており、法定労働時間や残業のルールもすべて適用対象となります。

そこで今回は、特定技能外国人の雇用にあたって必ず押さえておきたい労働時間の原則、残業・休日出勤の取り扱い、就労契約における注意点について、制度の基本と実務対応の両面からわかりやすく解説します。採用前にチェックしておくべきポイントを網羅的に整理していますので、安心して雇用を進めるための参考にしてください。

特定技能外国人に適用される労働時間の基本ルール

特定技能外国人を雇用する際は、日本の労働基準法が全面的に適用されます。まずは、労働時間・休日・休憩の基礎的な考え方を整理しておくことが重要です。ここでは、労働基準法の原則的な枠組みを理解することにより、企業が労働環境を整備するうえでの出発点を明確にしておきましょう。

労働基準法における労働時間の定義

日本の労働基準法では、労働時間の上限は原則として1日8時間、週40時間と定められています。これは、正社員やパート、アルバイトに限らず、特定技能外国人にも同様に適用される法的ルールです。

つまり、在留資格に基づいて労働しているからといって、特別に緩やかな労働時間というわけではなく、日本国内で働くすべての労働者と同様の取り扱いを受けることが原則です。

労働時間とは、事業場において使用者の指揮命令のもとに置かれている時間を指します。たとえば、現場での作業時間だけでなく、始業前の準備時間や終業後の片付け、または業務命令として行われる研修や会議の時間なども含まれることがあります。

一方で、法的に「労働」とみなされない待機時間や休憩時間は、労働時間に含まれないことが原則です。ただし、職務上の都合で事実上拘束されているような場合には、休憩時間であっても労働時間と判断されるケースもあるため注意が必要です。

休日・休憩・勤務時間の取り扱いのルール

労働基準法においては、使用者には最低限の休日・休憩を確保する義務が課されています。具体的には、1週間に少なくとも1日、または4週間に4日以上の休日を与える必要があり、これはいかなる雇用形態においても共通するルールです。休憩についても、1日の労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければなりません。

勤務時間の設計においては、連続勤務の制限にも配慮が必要です。たとえば、夜勤の翌日に日勤を割り当てるといった無理のあるシフトは、健康障害やパフォーマンス低下の原因になりかねず、過去にはこのような勤務形態が問題視された事例も報告されています。特定技能外国人についても、こうした連続勤務の過酷さが離職や不満につながるケースがあり、企業側の管理責任が問われることになります。

また、勤務時間の取り扱いは労働条件通知書において明示されるべき項目であり、外国人材が日本語に不慣れであることを前提に、英語や母語による補足資料の用意も望まれます。誤解や認識のズレを防ぐためには、丁寧な説明が不可欠です。

技能実習との違いから見る特定技能の労働時間のルール

技能実習制度と特定技能制度の違いは、受入れ目的と法的位置づけの違いに起因しています。

技能実習では、外国人材に技能を習得させて本国に持ち帰らせるという「育成型」の制度であり、労働の側面はあくまで手段とされてきました。そのため、指導者の同席や教育カリキュラムの存在が前提となり、実習先企業にも「教育施設」としての配慮が求められていました。

一方、特定技能制度は「労働力の受入れ」を目的とした制度であり、就業形態は日本人と変わりません。企業と労働者の間で締結されるのは一般的な雇用契約であり、労働基準法や最低賃金法といった日本の労働法規が全面的に適用されます。この違いにより、労働時間の設定や残業・深夜労働の取り扱いにも大きな差が生まれています。

したがって、技能実習と同様の感覚でシフトを組んだり、曖昧な条件で就業を指示したりすると、労働基準監督署や出入国在留管理庁からの是正指導につながるおそれがあります。特定技能制度を活用する企業は、この制度の「労働者」としての本質を踏まえ、正確かつ適法な労務管理を行うことが求められるのです。

特定技能外国人における残業・深夜・休日労働の実務対応

外国人材に残業や深夜勤務を命じる場合も、日本人と同様に法令上の対応が必要です。ここでは、その具体的なルールと実務の注意点を解説します。特に、日本語での説明に限らず、外国人材が理解できる言語での明示や、文化的背景への配慮も実務では重要な要素となります。

  • 残業を命じる場合には必要な36協定の整備をしておく
  • 深夜・休日勤務の割増賃金の支払い義務を確認しておく
  • 労働条件の明示し、雇用契約書へ記載する

残業を命じる場合には必要な36協定の整備をしておく

労働基準法では、法定労働時間を超えて労働をさせる場合、労使間で「36(サブロク)協定」を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ることが義務とされています。特定技能外国人に対して残業を命じる場合も、当然ながらこの協定の締結と届け出が前提条件となります。

36協定は、時間外労働や休日労働の限度時間、労使の合意内容、特別条項の有無などを明記し、就業規則とも整合させておく必要があります。特に外国人材に対しては、時間外勤務が発生する業務内容や頻度、時間帯について具体的に説明し、納得のうえで契約に盛り込むことが求められます。

協定の存在を知らずに違法な残業が常態化していた場合、行政指導や受入れ停止処分を受けるリスクも高まります。

深夜・休日勤務の割増賃金の支払い義務を確認しておく

日本人と同様に、割増賃金の支払いは特定技能外国人にも厳密に適用されます。午後10時から翌午前5時までの深夜勤務や、所定外労働による休日出勤には、それぞれ定められた割増率を上乗せして賃金を支払う義務があります。割増率は、時間外労働25%以上、深夜労働25%以上、休日労働35%以上が原則です。

たとえば、通常時給が1,200円の外国人材が深夜帯に働いた場合、1時間あたり1,500円(=1,200円×1.25)の賃金を支払う必要があります。これを怠ると未払い賃金として訴訟や是正命令の対象となり、労務トラブルの火種になる可能性もあります。

給与計算システムと勤怠記録を連携させることで、こうした漏れを未然に防ぐ工夫が求められます。

労働条件の明示し、雇用契約書へ記載する

労働時間や残業・休日労働に関するルールを、雇用契約書の中で明示することは必須です。

特定技能外国人との契約においては、労働基準法第15条や出入国在留管理庁の指針に基づき、労働条件通知書または雇用契約書に、就業時間、休憩時間、休日、時間外労働の有無と割増賃金、勤務場所、業務内容などの詳細を記載しなければなりません。

さらに、これらの文書は外国人材本人が理解できる言語で交付することが原則とされています。日本語が不得意な場合には、英語やベトナム語、インドネシア語など、相手の理解度に応じた翻訳と説明が必要です。

特に残業の可能性や夜勤シフトの導入がある場合には、その旨をしっかりと説明し、双方の合意形成を文書化しておくことがトラブル回避の鍵となります。

特定技能外国人の労働時間管理の実務対応と遵守体制構築のポイント

適切な労働時間の管理体制がなければ、無意識のうちに法令違反につながるリスクがあります。ここでは、実務に即した管理方法と体制構築のポイントを解説します。外国人材の受け入れに際しては、文化的な理解や日本の労働慣行への適応支援も含めて、全体の労務体制を見直すことが重要です。

勤怠管理徹底と労働時間の管理体制整備のポイント

労働時間の適切な管理には、タイムカードやICカード、クラウド型勤怠管理システムなど、複数の手法があります。これらは単なる記録手段ではなく、企業のコンプライアンスを支える根幹でもあります。

特に外国人材を雇用する企業では、勤怠記録を正確に残すことで、在留資格更新時や監査対応時においても信頼性の高い証拠となります。タイムカードは安価で導入しやすい反面、手書きや打刻忘れのリスクがあります。ICカードや顔認証などのデジタル手段は打刻の正確性と管理のしやすさが魅力ですが、システム導入には一定のコストと教育が必要です。

クラウド型システムであれば、リアルタイムでの集計・分析や外国語対応の機能を活用することで、外国人材の定着支援にもつながります。

さらに、勤怠記録は労働基準法に基づいて3年間の保存義務がありますが、入管法上の在留資格の適正管理という観点からも、より長期にわたる保存や定期的なバックアップが推奨されます。

変形労働時間制・シフト勤務導入時の実務ポイント

宿泊業・外食業・介護業などでは、繁忙期や夜間対応の都合から変形労働時間制やシフト制の導入が必要になることがあります。変形労働時間制を導入する場合は、労使協定を締結し、所轄の労基署への届け出、就業規則の改定、従業員への説明など一連の手続きが必要です。

1ヶ月単位の変形労働時間制では、1日8時間を超える労働が可能となる反面、事前に決められた勤務表が厳格に適用されるため、急な変更や対応には注意が必要です。シフト制の場合は、一定の予見性と均等な勤務分配が求められ、夜勤や土日勤務に偏りが出ないよう配慮することが求められます。

外国人材にとっては、自国と異なる勤務形態に戸惑うこともあるため、勤務表やルールの内容を母語や、わかりやすい日本語で解説し、理解を深める機会を設けることが望ましいといえます。繁忙期や閑散期のメリハリを意識した人員配置により、無理のない労働環境を提供することが定着促進の鍵となります。

労働時間超過による行政指導事例と対策のポイント

近年、特定技能制度に関連して、労働時間の超過や記録不備により行政から是正指導や受入停止措置を受けた事例が複数報告されています。特に建設業や外食業、介護などの分野では、忙しさからくる長時間労働や不適切なシフト管理が問題となることが多い傾向にあります。

たとえば、ある介護施設では、夜勤シフトの連続勤務が問題視され、記録上は8時間勤務であっても実際には16時間以上拘束されていたことが判明し、是正勧告を受けました。こうしたケースでは、勤務記録と実態の乖離をなくすために、現場とのコミュニケーションを密にし、定期的な勤務実態のモニタリングを行う必要があります。

また、入管庁からの在留資格更新審査においても、過重労働が継続している事実が認められると、次回更新を拒否されるおそれがあります。そのため、企業としては自社の労務環境が特定技能の制度趣旨に即しているかを定期的に見直し、外部の専門家や登録支援機関と連携して労務監査を実施することも効果的です。

特定技能制度における業種別の労働時間の実態と対応策

建設業や外食業、介護など、特定技能で外国人材を受け入れる業種ごとに、労働時間の傾向や注意点は異なります。業種の特性に即した労働時間の設計が、外国人材の満足度向上と定着率アップに直結します。ここでは、業種ごとの勤務実態と対応のポイントを詳しく解説します。

業種ごとの勤務時間の傾向と特徴

特定技能制度の対象業種は多岐にわたりますが、特に建設業や外食業、介護は受入数が多く、就労時間の特徴も明確に分かれています。

介護業界では、24時間体制でのサービス提供が求められるため、日勤・夜勤の交替勤務が一般的です。夜勤は16時間連続(仮眠含む)や、準夜勤・深夜勤を含む2交替制、3交替制など施設により運用が異なります。夜間の緊急対応や身体介助が含まれるため、心身への負担が大きく、適正な休息と交代システムの整備が不可欠です。

建設業界は日中の就業が中心ですが、夏場の熱中症対策が必要だったり、年度末の工期調整により早朝勤務や長時間残業が発生しやすかったりする業種です。現場によっては週末出勤も必要となるため、月間の労働時間が変動しやすく、繁忙期と閑散期のバランスを見た勤務設計が必要です。

外食業界は営業時間の長さと来客の波が大きいため、深夜勤務や土日祝勤務が多くなる傾向にあります。特に居酒屋やファミリーレストランでは22時以降の勤務が常態化しており、深夜割増への対応や交通手段の確保が現場管理者の重要な役割となります。店舗数や営業時間によっては早番・遅番・中番など多様なシフトが必要となり、柔軟性と予見性のあるスケジュール調整力が求められます。

繁忙期・夜勤に対応したシフト設計の考え方

業種別の勤務実態に合わせてシフトを設計する際は、労働時間の上限や勤務間の休息時間をしっかりと確保することが前提です。繁忙期であっても、1日8時間・週40時間という原則を踏まえつつ、変形労働時間制や時間外勤務のルールに則った対応が求められます。

夜勤が想定される業種では、同じ従業員に連続して夜勤を割り当てるのではなく、チームごとにシフトを循環させるローテーション制の導入が効果的です。夜勤後に十分な休息を与えず翌日の勤務を設定すると、健康被害やミスの原因となり、労務トラブルにも発展しかねません。そのため、シフト表には勤務時間帯だけでなく、休息時間や勤務間インターバルを明示することが重要です。

また、繁忙期には一時的に人員が不足することも想定されるため、登録支援機関などと連携し、短期補充や代替要員の確保体制を整備しておくことも現実的な対策です。外国人材が安心して働ける職場を維持するためには、柔軟で透明性のあるシフト設計が鍵を握ります。

業種ごとに起こりやすい労務トラブルとその対策

業種別に発生しやすい労務トラブルを事前に把握し、予防策を講じることが外国人材との信頼関係の構築につながります。業種別に主なトラブル事例と有効な対策をまとめると下の表のようになります。

業種よくあるトラブル例対策方法
介護夜勤明けの連続勤務、勤務時間の不透明さ勤務間インターバル制度の導入、就業規則への明記
建設長時間労働、休憩の未取得勤怠記録の徹底と現場リーダーへの指導強化
外食割増賃金の未払い、休日労働の扱いの曖昧さ給与規定の明確化、週単位のシフト確定と掲示

特定技能制度では、労働時間に関する違反が確認されると、在留資格の取消や次回の受け入れ停止など、企業にとって深刻な影響が及ぶ可能性があります。トラブルが発生する前に、制度理解と現場管理を徹底し、外国人材のための相談窓口の設置や定期的な労務監査を通じて、早期の是正と改善につなげていく姿勢が大切です。

外国人材の支援サポートは「外国人材採用ラボ」をご活用ください

特定技能外国人は、人手不足の企業が意欲的な即戦力人材を獲得し、長期的な定着を目指すための効果的な手段です。一方で、はじめて外国人材を採用する企業では「外国人材の面接の仕方がわからない」「義務的支援を滞りなく行えるかわからない」と不安を感じられている方も多いです。

当サイト「外国人材採用ラボ」を運営する株式会社クレイプラスは、外国人材紹介事業者でありながら、特定技能外国人の登録支援機関として認可されています。特定技能外国人の採用まわりの手続きを丸ごとご依頼いただけるうえ、義務的支援の内容も任せられるため、企業の担当者の方の負荷を最小限に抑えながら特定技能外国人を採用することができます。

最後に、「外国人材採用ラボ」の概要と提供するサービス内容を紹介します。

外国人材採用ラボとは

「外国人材採用ラボ」は、株式会社クレイプラスが運営する外国人材の採用・登録支援を専門とするサービスです。特定技能制度に精通した専任スタッフが在籍し、制度運用や労務管理、生活支援まで幅広く対応できる体制を整えています。

外国人材採用ラボの強みは、採用計画段階から在留資格取得、雇用契約の整備、配属後の生活・就労支援に至るまで、ワンストップで対応できる点です。単なる人材紹介ではなく、外国人材が安心して働き続けられる環境づくりを受け入れ企業様と共に進めています。

外国人材採用ラボを運営する株式会社クレイプラスは、登録支援機関として出入国在留管理庁の正式登録を受けており、コンプライアンス遵守の観点からも、外国人材の採用・支援を安心してお任せいただけます。特定技能制度における外国人材支援が初めての企業様に対しても、丁寧なヒアリングと明確なフロー設計で、無理なく導入できるようサポートします。

労働時間や制度対応も含めた総合支援

外国人材採用ラボでは、労働時間や就業規則、シフト設計といった実務レベルでのご相談にも対応しています。

たとえば、夜勤勤務や変形労働時間制の導入を検討される際には、就業規則の見直しや雇用契約書の書き方、割増賃金の計算方法まで、企業の状況に応じて具体的にアドバイスを行っています。

また、外国人材が制度を理解しやすいよう、母語対応の説明資料や多言語マニュアルのご提供も可能です。企業と外国人材の双方が安心して契約・就業に臨めるよう、契約前後の丁寧なフォローアップを重視しています。

外国人材採用ラボの外国人材の紹介サービス

外国人材採用ラボは、人手不足に陥っている企業で即戦力として活躍できる特定技能外国人を紹介しています。

あらかじめ特定技能1号の在留資格を取得するのに必要な日本語能力試験・技能試験を保有している候補者を選定しているため、業務に関する一定の知見やノウハウがある状態でスムーズに就業を開始することができます。また、就業意欲が高く、残業や夜勤にも積極的に取り組める候補者を中心に紹介していることも特徴です。

特定技能制度への不安や運用の悩みがある企業様は、ぜひ「外国人材採用ラボ」までお問い合わせください。経験と知見に基づいた現実的なご提案で、貴社の外国人材活用を全力で支援します。

まとめ

特定技能人材を受け入れる際、労働時間に関するルールや管理体制を正しく理解し、実務に落とし込むことは不可欠です。特定技能制度に適合しつつ、外国人材が働きやすい職場を整備することが、定着と生産性向上への第一歩となります。

制度導入や運用に不安がある場合は、「外国人材採用ラボ」までお気軽にご相談ください。労務管理や就業規則の整備、契約書の作成支援、シフト管理など、実務に即したご支援を通じて、企業の皆さまの円滑な制度活用を全力でサポートいたします。

外国人材採用ラボでは、制度対応・契約整備・労働時間管理・定着支援までを一貫してご提供しています。企業の皆さまと外国人材の信頼関係構築に向けて伴走支援いたします。少しでもご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。